大胆不敵な予告状 ページ20
(em side)(会話ばっかり)
「け、警部！署と歴史館にこんなものが…！」
ドタドタと慌ただしい声が聞こえる。
その声で何があったか全て察したが、平静を装い聞き返す。
「どうかしましたか？」
「またアイツらです！【我々怪盗団】からの予告状ですよ！！今度は佐山県立歴史館が標的だそうで…！」
そう言って部下の一人がすっと差し出してきたのは1枚の紙だ。
白い紙に金色の流暢な文字で犯行声明が書かれていた。
【来週水曜日の夜8時、佐山県立歴史館にてイタズラを行う。止められるものなら止めてみせたまえ。健闘を祈るよ、警察署君。
我々怪盗団より。】
流暢ながらも丸っこい文字、丁寧な物言いのクセにわざわざ警察を煽るような文書。
彼女らしいな。と思わず口元が緩む。
「分かりました、上に指示を仰ぎましょう。少しこちらお借りしますね。」
「はい！よろしくお願いいたします！」
予告状を部下から預かり、署長の元へ歩く。
署長室と書かれた扉をノックすればすぐに返事が返ってくる。
「署長、エーミールです。」
「あぁ、どうだ？手筈の方は。」
「順調ですよ。全く…Aさんにオスマンさん使ってまで、あんなまわりくどい事しないでくださいよ…そもそもAさんは貴方の顔すらよく知らないんですから…」
「いやいや、あれ一度やってみたかっただけなんだって。……次は直接会いに行くさ。」
彼女のご自慢のラボも見てみたいしな。と歯をみせてギラリと笑う彼。
「はぁ…彼女の事、あまり怖がらせたりしないでくださいよ。……グルッペン署長。」
「あぁ、わかっているさ。警備配置はほどほどにしておくから許してクレメンス…。エーミール警部殿。」
「そこは薄めにするとかじゃないんですね…」
「遊びがないと……いやいや、ちゃんとしておかないと俺がもっと上から怒られてしまうからな。」
「本音ダダ漏れですね。遊びってどういうことですか。」
「薄っすい警備を制圧してイタズラするよりも、ギリギリを潜り抜けて、己の信条を通しイタズラを成功させる者達の方を、オーディエンスは求めるんだよ。」
君たちもスリルがある方が愉しいだろう？
と問いかけてくる。
見通してくるような目に少し後ずさってしまう。
「……はいはい、わかりましたから早めに捜査本部立ち上げるなりなんなりしてくださいね。」
「エミさんも厳しいナァ…わかりましたよー。」
デスクに戻る道で、ぽつりと呟いた。
「さて、私も仕事を遂行しましょうか。」
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作者名：一 | 作成日時：2022年12月14日 12時
