05 ページ6
．
ああ、もう、こんなことになるなんて
わかっていたら、絶対ここには連れてこんかったのに。
．
「たつのりさんの彼女っすか？」
「ん？あ、ちゃう、幼なじみ」
「えー！ほんますか！おれ、�盒桐�って言います」
『らん、くん』
Aが小さな声で呟いたのを俺は聞き逃さへんかった。
いつもたつのりさんにはお世話になっております。
ふざけてAにお辞儀する藍と、
いえいえそんな、こちらこそっ！
と照れたように返事をするA。
「藍と同い年やで」
「え！マジで！年下やと思ったわ」
「一人で来たん？」
「あっ、はい、！」
「大阪から？」
「大阪から、ですっ」
藍の持ち前のコミュニケーション能力で
繰り広げられる2人の会話に、正直苦しくなっていたその時、俺に声がかかる。
『次大塚選手、インタビューいいですか！』
「あっはい、ごめんちょっと俺行ってくるな」
「あ、うん、わたし、どうすればいい？」
「今日はもうホテル戻ってええよ、あとで連絡するわ」
「えっ、あ、うん、わかった」
せっかく久しぶりに会えたから、
もっとたくさん話したかったし、できることなら
再会を口実にその小さなからだを抱きしめたかったし
やのに、まさかこんなことになって
ちょっと冷たい言い方をした自分が嫌になる。
俺、ほんまになんも変わってへん。
振り向くとまた楽しそうに会話を続ける2人が、
あまりにも絵になって。
こんな光景、何度も何度も見てきたつもりやのに、
今まででいちばん苦しくて、
ああ、いつになったらこの子を諦められるんやろ
って気持ちと、
もしかして今がその時なんかなって気持ちで
ぐちゃぐちゃになった。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 99人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海松 | 作成日時：2024年2月15日 23時
