0 ページ1
．
5歳の頃、俺の家の隣、ずっと空き地やったところに家が建って、
ひとつの家族が引っ越してきた
挨拶に来た母親の後ろに隠れる君を
初めて見た時の印象は、ちっちゃい女の子、やった。
それから親同士が仲良くなった俺たちは
家族ぐるみでよく出かけるようになり、
「A」「たっちゃん」と呼び合うように。
元々標準語だった彼女が関西弁に慣れるのには時間はかからんかった。
．
ひとつ年下のAをずっと妹のように思っとった俺が、
初めてその感情が違うものやと気づいたのは中学2年生の夏。
毎年一緒に行っていた花火大会。
最初は家族ぐるみから始まって、
小学校高学年ぐらいからは2人で行くように。
それが毎年の恒例行事みたいなもんやったから、
彼女が気合いを入れて浴衣を着てくることなんて今までなかった。
やからいつものように家に迎えに行く提案をしたのに、
「たっちゃんのことびっくりさせたいから、待ち合わせにしたい」と彼女に断られた。
待ち合わせでびっくりさせたいことってなんやねん、
そう思いながらも当日、指定された場所で待っていると
現れたAは浴衣を着とって。
「じゃーん！浴衣、買ってもらった！浴衣着んの初めてやから、たっちゃんびっくりさせたかってん。」
びっくりした？
はにかみながら言う彼女に、今まで体験したことないくらい動揺して、
頭の中では色々考えつくのに、口が動かなくて。
Aのことを初めて女の子だと認識して、ここで初めての恋をした。
「たっちゃん、どうしたん？」
かわいい？とくるりと一周して見せる彼女に
この動揺がバレへんように、できるだけ無表情で、
かわいい、と答える。
「えー、絶対思っとらんやろ？笑」
その日からずっと、俺は彼女に片思いをしている。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 99人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海松 | 作成日時：2024年2月15日 23時
