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「忘れもんないー？」
「ないー！」
「鍵持ったー？」
「持ったー！」
「ん、ほんなら行こ」
これから藍くんと2人で1泊2日の温泉旅行。
藍がわざわざ車を出してくれるから、本当に2人きりの旅行。
「……え、助手席乗らんの」
「だって」
「だってちゃう、俺のことはええから、Aちゃんはここ」
「ほんとに？いいの？」
「せっかくの2人での旅行なんやし、デート気分味わいたいやん」
撮られたら撮るやつが悪い、なんてぷんぷんしながら言ってるけど、ちゃっかりメガネをかけて変装モード。
「何をわろてんねん」
「ふふ、なんにもない、藍、ありがと」
「なんやねんそれ」
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藍が言う出発進行の声で旅行はスタート。
「どれくらいかかるの？」
「3時間？くらいやな」
「意外と近いね」
「早く行ってゆっくりしたいやろ？」
「ご最もです、予約ありがとうございます藍様」
「こないだからさあ、藍様ってなに？笑」
「藍がスパダリすぎるんだもん」
「スパダリってなに？笑」
スパダリを知らない藍くんは無視して、スマホを車に繋いで音楽をかけると、わたしが無視したことなんて忘れたように熱唱し出す彼がかわいい。
ていうか、顔かっこよくてスタイルも良くて、バレーも上手くて、運転もできて、おまけに歌も上手いなんて
神様は藍を贔屓しすぎじゃないですか？
なんて彼を見つめながら思う。
「Aちゃん今こっち見とるやろ」
「え？」
「視線感じる」
「ふふ、正解」
「見とれとった？運転する俺めっちゃかっこいいもんな」
完璧すぎる藍の、こういうお茶目なところが大好きだったりする。
「かっこいいって言うと藍照れるし言わない」
「なんでや！笑」
「照れられたら運転に支障出そう」
藍には寝とってええで、って言われたけど
結局、藍とのお喋りが楽しくて(藍がずっと喋ってる)
一睡もしないまま目的地へ到着。
見渡す限りの温泉街に車を降りた瞬間からウキウキする。
「平日来てよかったな」
「うん、正解」
人そんなおらんやん、って言いながら荷物を下ろしてわたしの隣に並ぶ。
「こっからちょっとだけ歩くけど、なんか食べる？」
「え！食べたい！」
「ん、行こ」
当たり前みたいにわたしの手を取って歩き出す藍に、
未だにちょっと、どきどきする。
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作者名：海松 | 作成日時：2024年1月21日 1時
