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Ep.14「In fact」 ページ28
夜風が優しくわたしの頬を撫でる。
太陽も水平線の向こうに沈んで、海辺はもう静かだ。
「ごめん、さっきメッセージみたばっかりで… 待たせてごめんね」
「ううん、平気さ。 …今日の君も凄かったね」
「あはは… フィディオには負けられないなって思ったんだ。
ただ、1回目のカテナチオカウンターは、見とれちゃって動けなかったけどね…
すごく、かっこよかった…」
なんて笑ってみせる。本当のことだもん。
そしたらフィディオも照れたように「そう言ってもらえて嬉しいよ」なんて返す。
…本当にここは静かだ。
フィディオは一息ついて、真面目な顔をした。
その横顔も、なんだか凛々しくて。
「A… オレ、君の事好きみたいだ」
言葉もでなかった。驚きすぎて。
だって憧れのフィディオが。わたしの事を好きなんて。
「初めて会ったときから、どこか君に惹かれていたんだ。
毎日どこかで会ったりしないかななんて暇さえあればイタリアエリアを歩いて回ったり、日本エリアに来て練習の様子をみていたこともあったよ。
君が出ている試合だって、全部見てきた。…アルゼンチンとの試合を現地で見られなかったのは残念だったけどね」
わたしの試合…全部見てくれてるの…？
今まで気づきもしなかった。わたしも貴方を、好きなはずなのに。
「…でも、この大会が終わったら君とは会えなくなる。君にとって世界で出会った友達、という認識でしかなくなる。それが嫌だっだから…ここに来たんだ」
「でもわたし…」
貴方とは、釣り合わないよ。
そう言おうとしたところを遮られてしまった。
それも…フィディオの暖かさで。
「…自分勝手なことはわかってるんだ。今だってこんな風に抱き締めてしまって。でもそれは聞きたくない…」
「フィディオ… そんな…」
「…返事は今じゃなくていいんだ。日本に帰ってしまうまでに聞かせてほしい」
そしてわたしたちは離れる。
わたしたちの間を、冷たい風が吹いた。
さっきが暖かかったから、なおさら冷たい。
「じゃあ、オレは帰るよ。また来るね」
「うん、気をつけて帰ってね」
そういってフィディオを見送ってから、わたしも宿舎に帰る。
入り口前で、ヒロトくんに会った。
「誰かと会ってたの？」
「えっ…？…ちょこっとお散歩だよ」
…なんで今嘘ついたんだろ？
やましいことじゃなかったのに。
しかもヒロトくん、なんでそういう風に聞くの…？
「そう…？ もう暗いんだから、気をつけてよ？Aちゃんも女の子なんだから」
「うん、ごめんね」
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作者名：落葉このは | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/ayakayukik2/
作成日時：2019年9月28日 23時
