【伍】人の生を捨てられますか？【我妻善逸】 (ページ21)

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もう１つの最終話１ページ21

善逸の胸元から守石が消えた。
それはAが善逸の前に２度と現れないという事。
その事実を善逸は受け止めきれず暫くは塞ぎ込んでいた。
それを支えたのは禰豆子だった。

禰豆子の支えにより次第に善逸は立ち直り、前を向けるようになった。
そんな２人がとうとう結婚する。

「……禰豆子ちゃん、俺ずっとAを忘れられないけど許してくれる？」
「善逸さんだけじゃないよ、お兄ちゃんも伊之助さんも私も……誰もAを忘れられないもの。」
「……うん………そうだね。」
「Aさんは私にとってお姉ちゃんみたいな人だった、優しくて暖かくて……今頃、善逸さんが立ち直った事に安心してるんじゃないかな？」
「だと良いなぁ……」

Aがいたという証はどこにもないが、善逸達の記憶にはしっかりと残っている。

時は経ち、現代ー

「凄ぇ！！皆で鬼のボス倒したじゃん！！やったじゃん！！」

泣きながらも本を読む少年が１人。
その本の名は“善逸伝”。
そして少年の名は我妻善照。

ドカッ

「あだぁ！！」
「また曾お祖父ちゃんの嘘小説読んでるの！？」
「今背中蹴ったぁ！？」
「テスト前なのに信じられない、このあいだも赤点ばっかりだったでしょ！！」

善照の背中を蹴ったのは１つ上の姉、燈子。
２人は善逸と禰豆子の曾孫であり善照は善逸に非常に似ていた。
ふと、善照は善逸伝の最後のページに書かれた文章に目がいった。

「姉ちゃん、この小説の中に書いてある曾祖父ちゃんの想い人って曾祖母ちゃんの事じゃないよね？」
「はあ！？何言ってんの？曾お祖母ちゃんじゃなかったら私達生まれてないでしょうが！馬鹿な事言ってないでさっさと行くわよ！」
「う、うん………。」

ー彼女から渡された淡青色の守石は消え、想い人であった彼女はもういない。もし、俺の子孫が彼女に逢う事があれば簪を渡して欲しい。そして伝えてくれ。ー

「(淡青色の守石？なんだそれ……。)」

善照の頭からその文章が離れない。
曾祖母の持ち物からそんな物は見つからなかったし、そもそも“彼女”とやらに自分達が逢うなんて有り得ないと思っていた。

「……あのさ、もし曾祖父ちゃんの言う人が今も生きてるって言ったら……」
「あんた、まだそんな事言ってんの？」
「だってさ！鬼のボス倒した時もいた人で曾祖父ちゃん達を助けてた人なんだぜ？」
「はぁ……生きてたとしても１００歳超えてるわよ。」
「だよなぁ…。」

納得しつつも善照の視線は擦れ違う女性を見ていた。