209話 ページ11
獪岳さんが私を抱き締めていても私は抱きかえす事はしなかった。
少ししてから鬼灯さんが声を掛ける。
「Aさんそろそろ……」
『はい……。』
身体を離して最期のお別れを言う。
『……獪岳さん、貴方は私にとって兄の様な存在でした。』
「俺は兄じゃなく特別な存在になりたかった……!」
『……ごめんなさい。』
「そんなに……カスが……善逸が良いのかよ……」
『はい。』
「善逸がお前を選ばなくてもか?」
『はい……それでも善逸が私を想ってくれた事は私の力となりますから。』
強がりなんかじゃない。
例え善逸が禰豆子ちゃんを好きになっても私は構わないのだ。
笑って2人を祝福出来る。
『……獪岳さん、もう2度とお会いする事はないでしょう………どうか地獄での償いを頑張って下さい。』
「……あぁ………」
『……さようなら、“お兄さん”。』
クルリと背を向けてシロさん達に先を促す。
心配そうなシロさん達の頭をそれぞれ撫でながら私は天界への道を辿った。
「では、私は戻ります。」
『鬼灯さん有難う御座いました。』
「仕事を片付けたら行きますので。」
『はい。』
見送ってくれた鬼灯さんに会釈して白澤さんの所へ。
道中ではシロさん達が色々と話してくれた。
『……大運動会?』
「そう!鬼灯様が競技を決めて皆で競うんだけど……」
「あれは酷かったな……。」
「Aさんはどうやって鬼灯様と知り合ったんですか?」
『亡者と間違われて連れて来られたのがキッカケかなぁ……当時も亡者が多くてお迎え課の人達が大急ぎで連れて行ってたから眺めていたら、列を崩すなと言われて引っ張られてねぇ……。』
あの時の鬼灯さんの顔はヤバかった。
視線だけで人殺せるレベルの目付きで睨まれたからなぁ…。
「ん?Aさんは一体どういう……「あ!見えてきたよ!」……。」
ルリオさんの言葉を遮って嬉しそうに尻尾を振るシロさん。
何となくルリオさんの聞きたい事が分かってた私は
『閻魔様と鬼灯さんに聞けば答えてくれるよ。』
とだけ伝えた。
顔を前に向けて絶句。
『………桃園……?』
桃がたくさんあり、まるでお祖父ちゃんの桃園を思い出した。
『(そういえば、お祖父ちゃんが死んだあとの桃園はどうなったんだろう……。)』
あの人の遺骨は鬼殺隊側で保管してくれているのだろうか。
戻ったら家の中の整理をしなくちゃいけない。
シロさん達が走っていくのを付いていきながら私はぼんやりと考えていた。
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作者名:みゅう | 作成日時:2021年2月16日 6時