メリーゴーランド (ページ5)

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報われなかったこと全部、
もういいやって思えるの。

欲しいものは何一つ買い与えてはもらえなかったどころか、必要なものにさえ困った子供時代。

行きたかったところに連れて行ってもらった事もない。

私はいらない子供だった。

悲しみに飲み込まれてしまいそうで。

慌てて、記憶に蓋をする。

「じゃ、行ってくる。
今日は泊まるから」

「うん、行ってらっしゃい。
気をつけてね」

かけるを送り出してからも、
一人でカラフルな、
サークルのチラシをずっと眺めてた。

金髪の神様の可愛い笑顔が胸に浮かんでくる。

この絵、神様が書いたのかな。

可愛いネコ達が、
なぜか遊園地のメリーゴーランドの前で踊ってるイラスト。

このネコの仲間入りしようなんて、
私には贅沢。

カフェの窓からこっそり眺めてるだけで十分。

それでいいんだから・・・

月曜日は朝から土砂降り。

今日はダンスサークルの練習は講堂だろうな。

神様の姿、見られない退屈な一日。

神様は、バイト先のこのカフェではご飯食べないみたいなんだよね。

一回も来たことはない。

「A、A。
今日って、ここ何時まで？」

カウンター席から、
みなみが聞いてくる。

みなみは、小学校時代の友達で、
この星陵大の正真正銘の学生。

「今日は４時までだよ」

夜からまた近くのドーナツ屋さんでバイトだけど。

「じゃあ、最後の講義、一緒に出ない？」

いきなり何を言うかと思ったら、
とんでもない提案だな。

みなみらしいと言えばそうなんだけど。

「何言ってんの？
出られるわけないじゃん」

「私さあ、
経済学部に転科したいなあって考えてるの。
ちょっと聴講に行こうかなって。
一人で行くの心細いから、
Aもついて来てよ。お願い」

確か、神様も経済学部だって言ってた。

急に胸がばくばくしてきた。

「いいよね？」

みなみが甘えた顔ですり寄ってくる。

断る事も出来たのに・・・

ひとめ、会いたくて。