メリーゴーランド (ページ28)

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「そんな事ないよ」

慌てて否定。

「Aちゃんて、字、めっちゃ綺麗よな。
あのノート、ほんまに見やすかったもん。
習字習ってた？」

そんな褒められたら、照れる。

「ううん。
習ってないよ」

習い事は何一つさせてもらった事なくて、
教養がなくて情けない。

「そうなん？
素であんな綺麗なん？
すごいな」

神山くんが言った時、
坂本教授が講義室に入って来た。

講義が始まる。

神山くんが私に目配せした。

すごく距離が近い。

講義に集中しなきゃいけないのに、
神山くんのいる左側にばかり意識がいきそう。

神山くんが褒めてくれたから、
今日も出来うる限り、
丁寧にノートを取る。

これは重岡くんに渡すものなんだけどね。

神山くん、疲れてるのか、
本当に途中からうとうとし出したの。

そのうち、バタンって机に突っ伏して眠っちゃった。

奇跡的に顔はこっち向いてて、
可愛い寝顔、見られるなんて、
なんという幸運。

ちょっといたずらして、
ノートの裏のページに、
寝顔、描いちゃった。

講義が終わるチャイムの音で神山くんが目を覚ました。

「ああっ、寝てもうた。
昨日、シゲと濱田先輩と徹夜でサッカーゲームしてもうたから」

頭、抱えて可愛い。

重岡くんと、サークルの濱田先輩と、
学生寮で同じ階に住んでるらしいんだ。

サークルでも、
３人、いつも一緒にワチャワチャしてて、
見てて微笑ましいの。