メリーゴーランド (ページ3)

今日:7 hit、昨日:36 hit、合計:277,660 hit

２ページ3

「ごめん。行くな？
興味あったら練習見に来てよ。
いっつも大学のカフェの裏手の中庭で練習してるからさ。
あ、俺は経済学部３回生の神山ともひろです。
初心者でも丁寧に教えるから。
絶対来て！」

神様は、最後にとびきりの笑顔をくれて、
鮮やかに去って行く。

胸が一段、飛び跳ねた。

2歳年下の弟のかけると二人暮らしのアパートに帰ってからも、
さっきもらったチラシをずっと眺めてる。

声、初めて聞けた。

思ってた通りの、
すごく優しい声だった。

神山くん、か。

３回生って事は、同い年か。

でも見えないなあ。

神様はすっごく可愛い顔してるから。

「大学生でもないのに、
サークルなんて入れるわけないよね」

つい、ひとりごと。

子供の頃から、
この星陵大学に憧れてた。

小学生の頃、放課後通ってた学童に、
星陵大の大学生のお姉さんお兄さんが、
ボランティアで来てくれてたの。

みんなすごく優しくて、
私の話をちゃんと聞いてくれるのは、
あの人たちだけだった。

確かな未来へ向かって、
みんなキラキラ輝いて生きてるように見えて・・・

私もあの世界の住人になりたいと願ってた。

それだけを目標に頑張ってたけど、
親に、母に許してもらえなかった。

うちはそんなにお金持ちじゃないって。

優秀なかけるが、
医大に行くためには、
平凡な能力の私は高校までしか出せないって、
さんざん聞かされてたから。

はじめから諦めてたけど・・・

腹がたつのは、弱虫の自分。

奨学金もらってでも、挑戦すれば良かったのに。

結局、逃げたんだ。

アパートのドアをドンドン叩く音。

「姉ちゃん、開けて」

かけるが帰って来た。

翔って書いて、かける。

今年から晴れて星陵大の医学部生。

子供の頃から優秀で私の自慢なの。

「かける、今日は早いね。
大学終わったの？」

お医者さんになるのって、
本当に大変だなって、
かけるを見てるとしみじみ思う。

小さい頃から塾通いして、
私立の中高一貫校に通って、
ひたすら勉強して。