メリーゴーランド。1 ページ2
Aside
星稜大学のカフェでアルバイトをするようになって3ケ月が過ぎようとしてる。
自分と同じ年頃の大学生たちが、
自分とは全く別な、
きらきらした世界に生きてるのを横目で見てるだけの毎日。
楽しみは、
カフェの窓から、彼が踊るのを見ること。
すぐそばにいるのに、
眩しくて、遠い笑顔。
大学のキャンパス。
門まで続くサークルの新入生勧誘の波。
そんなきらびやかな世界、
私には関係ない。
その集団の中に彼を見つけた。
今日も明るい笑顔。
気付いたら、足を止めて見つめてた。
あんまりにも凝視してたのかな。
彼が不意に私に気付いた。
慌てて目をそらせたのに。
お揃いのブルーのTシャツの集団の中から抜けて、
こっちに駆けてくる。
どうしよう。
私には大学のサークルなんて、
関係ない世界の話。
逃げ出さなきゃ。
だけど、あっという間に私の目の前にその人は立ってた。
「新入生?ダンス興味あるん?」
明るい屈託ない笑顔で聞く。
いつも着てるダンスサークルお揃いの、
青いTシャツの右胸にkamiのロゴ。
背中にも大きく描いてあるの、
いつも窓から見てた。
神様の神かなって、
勝手に彼の事、神様って呼んでた。
神様がどんなかは知らないけど、
こんなに優しい顔で笑う気がする。
金髪の無邪気な笑顔の神様。
「いっぺんだけでも見に来てよ。
初心者も大歓迎です」
関西弁・・・
びっくりしたけど、彼に似合う。
関西弁の神様はビラを一枚、私に差し出した。
入るわけじゃないのに、
無意識に受け取ってた。
「いえ。
私は・・・」
ここの新入生じゃないって言わなきゃ。
大学構内のカフェでバイトしてるだけ。
なのに、凍りついたみたいに声が出ない。
もう少しだけ、この人の声を聴いてたい。
口ごもってるうちに、
「神ちゃん!
はよ戻って!入りたい子、来たで!」
ブースの奥の方から、
仲間らしい男の子が、
神様を呼んだ。
神ちゃん、て事は、きっと名前だ。
神様なわけないよね。
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作者名:fool | 作成日時:2017年5月29日 11時