回る紙飛行機 Ren.N (ページ1)

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紙飛行機がどこからか飛んできて、足元にフワリと落ちる。

……紙飛行機。

読んでいた今度出演するドラマの台本をベンチに置いてそれを拾い上げる。
思い出すのは、アイツのこと。

ほんまに、俺、いつまで経ってもアイツの事ばっか。

例えば今日の朝も。
前日の夜、レギュラー持ってる雑誌のモデル仲間でテレビ通話でオールしてたから寝坊して携帯見たらマネージャーから大量の着信履歴に真っ青になって、そういや幼稚園のバスにAは毎朝遅刻してたなとか。

歯磨きあんま時間かけて出来んくて口の中気持ち悪いって言ったらミント味のガム貰って、Aはスースーするの苦手やったとか。

Aのことなら基本なんでもわかる。
風邪予防でマスクを付けて登校しましょう！ってなった時、なんか顔色悪そうで保健室連れてったら酸欠で倒れる寸前やった。
慣れへんマスクなんて付けるから。

先生に
「マスクしてたのに顔色悪いなんてよくわかったわね」なんて言われた。
一目見りゃ気付くわ。

小4のとき、大ヒットしたドラマのヒロインに憧れてちょっと大人ぶってたのもすぐわかった。
やたら髪をかきあげようとしてた。
お前ショートやろ。

全部全部、知ってた。

俺はアイツのことが物心付いたときから好きで。
アイツも俺のことが特別だから。

幼なじみっていう特権に胡座をかいてた。

俺はバカだから、自分から手放した。
Aという存在を。

お前は今、別の男のこと見てるんかな。

「お兄ちゃん！その飛行機ぼくの！」

小さな子供が走ってきて、大声で叫ぶ。

「キミのやったんや、はい」
「ありがとう！」
「上手やね、それ」
「お父さんが教えてくれたんだよ！」
「そうなん？」

あそこにいる！って子供が指を指した方を見たら、慌ててペコリとお辞儀をされる。
ゴッツイ撮影機材のせいで、芸能人感が余計に出てしまったらしい。

公園での撮影は、光の調整があって開始に少し時間がかかる。

「おにいちゃん、なにしてるひと？」
「げーのーじんやで」
「げーのーじん？」
「そう、写真撮ってもらう人」

「永瀬さん！撮影はじめます！」

スタッフが呼びに来た。
撮影が始まる。

「今行きます」

紙飛行機。

それは、Aと俺を繋いだもの。
これからも、俺の中でずっと生き続ける思い出。

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