-逃避行- (気象系) (ページ8)

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◇7◇-Ａ- ページ8

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小さい頃からずっと

「雅紀くんは優しい子だね。」

「お友達に優しくできる子はいい子なのよ。」

って言われ続けて育った。

小学校に入っても、周りから、友達から、家族から、

「雅紀は優しいやつだな。」

って言われてきた。

ずっと、自分はみんなが言う”優しい”奴で、それ以上でも以下でもない。

”優しい”のがおれだって疑いもしなかったから。だから。

『化け物』

『ちょっとは手加減するとかないの？人の気持ちわからないんじゃない？』

『あそこまでやるか？フツー』

中学生になって入って夢中になったバスケ部で、異例の一年生でのスタメンで。初めての試合で。

ただただ楽しくて。走って打てばどんどん点が入るのがうれしくて。

だから。

ー声が聞こえなかったんだ－

両足で跳んでシュートを打ったそのとき、ちらりと端に影が見えたけど、

もちろん特殊な能力を持っているわけでもないおれにはそれを避ける術なんてなくて。

ーピピー!!!ー

サイレンが鳴って審判が走ってくる。

目の前の敵チームの奴は、足を抱えたままうめくだけで。

おれはそれをただ見ているだけだった。

分かっていた。こいつがわざとおれの側に入り込んできたこと。

事故を装おうとして接触事故になってしまったから、こいつの自業自得なこと。

でも、

「相葉が怪我させたって。」

「マジ？こえー」

「相葉ってバスケすると人変わるんだな。」

噂は尾ひれを生やして、どこまでもどこまでもおれを置いて泳いでいって。

そして見えなくなった。

友達も、仲間も、家族も、光も、

全部。

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