08.好きだよ。...おまえが。 ページ8
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智「おっせえ…」
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遊園地に行く当日。
夏休み。それもお盆休み。
絶対人多いでしょと思いながら駅前で待って10分。
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カッコつけて待ち合わせの20分前に来たけど
彼女は、来る気配もない。
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(…早すぎた)
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あと10分も待たねえといけねえのかよ
…めんどくっさ。
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それから待ち合わせ時間ぴったりに来た彼女を、
少しだけ恨んだりもした。
…なにも悪くないのに。
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「あー楽しみ」
智「んな」
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駅で揺られてる中。
沈黙が流れたりするけど、でも彼女の隣にいるだけで温かみが増した気がした。
…それは、彼女の偉大な力で。俺にしか効かない力な気がする。
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「ついたー」
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彼女にはその風景が憧れらしく、目がキラキラと光っていた。
その横顔を俺はただ見つめるだけ。
はしゃぐ彼女を見るだけ。
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「テンションあがらないのー？」
智「遊園地そこまで好きじゃねーしな」
「えっ」
智「…でも、おまえとなら楽しいんじゃねーの」
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悲しい顔になって、困るのは
君でもなく、誰でもない俺だよ。
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君には笑っていて欲しいと
心から思ってる。
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「…大野くんって、ずるいひとだね」
智「え？」
「…ずるい、ずるい……」
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2歩先にいる彼女は、途端に顔を俯かせて
小さく呟くようにずるいと言っている。
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智「ずるくねーよ？おれ」
「ずるいんだよ。」
智「どこがだよ」笑
「かっこよすぎてずるい...」
智「…」
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お前も大概だよ。
って言いたくなったっけ。
お前もずるいじゃねーか。
…人のこと言えねえじゃねーか。
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心をぐいっと掴まれて、
心臓が痛くて、
でもその痛さですら心地いい。
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「…どこ行く……？」
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ちょっとだけ気まずい空気。
相変わらず2歩先にいる彼女。
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「ねえ、どこい...」
智「待てよ」
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俺を置いて歩いていこうとして
俺の目なんて一切見ないから
止めさせて、こっち向かせるためにも腕をぐいっと引っ張る。
…きみが、俺の心臓を掴んだように。
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智「…好きだよ」
「え…っ」
智「…おまえが」
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作者名：成瀬
| 作成日時：2017年12月7日 20時
