22.きみといることの安心感 ページ22
.
.
ベッドでゴロゴロしながら冷たいAの手を握ってた。
「37.9ならすぐ下がるよね」って笑いながら言ってるけどその笑みの中に不安が隠れてること、俺にはバレバレだよ。
...ひとりで看病できるかなとか思ってるんでしょ。
でも、他の人を呼ぶのは無しだよ。
例えば、同僚だとか言うニノミヤとかなんて言語道断。
俺が寝てるあいだに二人でイチャイチャされたんならたまらない。
.
「ねえねえ」
智「なに？」
「治るかなぁ…」
智「なんで俺よりおまえのほうが不安になってんだよ」
.
はは、と笑ってみせるときみはいつもの笑顔を取り戻す。
その笑顔を見て安堵する。
冷たい手を更にぎゅっと握る。
.
智「第一、俺は風邪なんて引かないような大馬鹿者だぜ？...すぐ治るって。な？」
「...くふふ、大馬鹿者だねぇ。大野くんは。」
智「ただそれ以上馬鹿にすると手が出るけどね？」
「それは嫌なのでもう馬鹿にしません」
智「ふふふ」
.
おいで、と言うと
？を頭に思い浮かべるような顔。
隣に来て。と言うとあぁ。と言いたげな顔をする。
…あーもう痛いほどにきみのことが分かってしまう。
それくらい近くにいるってことだよね。
.
智「んふふ」
.
俺の隣にそっと寝そべるきみ。
十分に温まった布団の中に冷たいAの体が入るといい感じに調和されて心地よくなる。
目を合わせる。
ちょっとだけ不安が隠れるような目。
.
Aの体を優しくそっと抱き締める。
…Aの体に風邪が移ってしまってもいい。
その時は俺が看病しちゃる。
…だって、俺ならきみの体の責任を取れる。
俺はそう思ってる。
.
「…はやく、風邪を治してください。」
智「1日で治してやるよ。」
「…そっか、大野くん大馬鹿者だもんね」
智「おい」
「んふふ」
.
笑い声が耳許をくすぐる。
そのくすぐったさが心地よくて、
不意に目を瞑る。
その目の隙間から涙が滲んでくる。
.
.
そのまま、Aのことを抱き締めたまま眠りについた。
この時Aもついでに寝たらしい。
.
.
智「風邪、治った気がする」
『さすが天才医師！』
智「天才医師のお粥が効いたわ」
『ふふふ』
.
何日待っても、彼女には風邪は移らなかった。
ちょっとだけ、悲しかったり悲しくなかったり。
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 279人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：成瀬
| 作成日時：2017年12月7日 20時
