19.赤いマフラー、淡いピンクの手袋 ページ19
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『さむい！』
智「毎年毎年この季節になると極度にうるさくなるんだけど」
『寒がりだからね！』
智「知らねーよ」
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ベッドの上。ゴロゴロしながら電話をする。
…いつもいつも、これの繰り返し。
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智『好きだよ。A。』
『私も好きだよ。』
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１ヶ月前のクリスマスも懐かしく感じる。
あのあと何度も唇を重ねたことは、きっと二人だけの秘密になっているはずだ。
…でも結局、愛してるとは言えないまま。
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智「…んで、なに。何用？」
『え、いやー近々会いたいなーって』
智「…だろうと思った」
『あと、去年大野くんの誕生日プレゼント渡しそびれたから渡したくて』
智「いいよ別にそんなん」
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耳元を擽るような声。
その声に安心している。
…その声が永遠に聴けると、…永遠を約束してるから。
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智「じゃあ俺からもプレゼントね。…25日が誕生日だろ？」
『え！なにくれるの？』
智「言うわけないだろ？楽しみがなくなんじゃねーか。」
『確かにそうだね』
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じゃあおやすみ！また今度ね！
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また今度という言葉の重さ。
また会えると、ずっとずっと信じてた。
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何度もあの子と行ったショッピングモール。
そこを散策してひとつの雑貨屋を見つける。
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『冬は好きだけど寒がりなんだよ！マフラーも手袋も最近ぼろっぼろになってきたから買い替えたいんだよね…』
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…そんな言葉を思い出した。
そうだ、彼女は手袋とマフラーを欲しがっていた。
ぴったりだ、と思ってマフラーと手袋が売ってある場所に飛び込む。
…そう言えば、彼女は何色が好きだっけ。とふと思い返す。
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智「…」
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目に入った赤いマフラーを手に取る。
ギンガムチェック柄の可愛らしいマフラーだ？
…正直、彼女は何をあげても喜ぶ気がした。
それくらい優しいってことだ。
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智「これと…、…これか？」
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もうひとつ、淡いピンクの手袋を手に取る。
…これは、手触りが良くて使いやすそうだと思った。
…決まった、彼女へのプレゼントはこれにしようと思った。
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1月のおわり。
きみに久しぶりに会って、久しぶりに抱き締める。
後ろ手に隠した手袋とマフラーを強く握りしめた。
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作者名：成瀬
| 作成日時：2017年12月7日 20時
