記憶4 ページ4
「それで話って...?」
「嗚呼、さっき俺が勘違いした相手の話をしたいんだ」
「どうして、私に?」
「似てるんだ」
「似てる?」
「そう、君の全てが」
「そうですか...」
私の事を言ってるのが解る
私がまた記憶喪失になったとでも思っているのだろうか
まぁ、無理もないと思う
私が逆の立場だったら、そう思う可能性がある
「そいつは、俺が愛した女性で、前は恋仲だったんだ」
中也はぽつぽつと昔の出来事を話していく
私が他人行事な相槌を打ちながら、話は進んでいく
とっくに5分を過ぎていて、坂口さんとの約束の時間を過ぎてしまいそうだが、今は話を中断したくない思いで一杯だった
「俺の所為で彼奴は死んだ」
そう彼が言った瞬間、思わず、「貴方の所為ではない」と言う言葉が喉まで出かかった
「俺はそいつの事を、今でも愛してるんだ
手前ェに言ったところで何も変わらないんだけどな」
って軽く笑った彼の目に悲しみが混じったように感じた
胸が痛い
いっその事、全てを打ち明けてしまいたい衝動に駆られる
それを抑える為に、この場を直ぐに離れたかった
「あ!すみません、時間が過ぎてしまいました。失礼します。お話有難う御座いました」
「こっちこそ、引き留めて悪かった。じゃあな」
「はい」
「――――」
私は異能特務課へと向かった
走っていた所為か、風の音の所為か
はたや、中也の事で頭が一杯だったのか
彼が最後に言った言葉は、私の耳には入ってこなかった
✽+†+✽――✽+†+✽
「A愛してる」
と直接彼女に言ったがきっと届いていなかっただろう
敢えて恋仲だった頃の話を彼女に話した
その反応次第で、記憶喪失なのか、そうでないかが解ると思ったが
やはり一筋縄ではいかない
だが、死んだ筈の彼女が生きていた
その事が分かっただけで十分だ
面白くなってきたじゃねェか!
俺は口角を少し上げ、彼女が走って行った方向とは逆の方向へと去った
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