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インターホンが鳴ったのは家に着いて五分程経った頃だった。
タイミング的にどこか近くの場所まで来て待っていたんだろう。
「すみません、急に」
「いや、いいよ。上がって」
気まずい空気は気の所為ではなく、彼女の雰囲気から感じ取れる。
俺の事を好いていないというのは、分かっていた。
「…美咲ちゃんの事?」
分かっているくせにわざと確かめる俺を、彼女はどう思うのだろう。
「意外。そういうの、気にしないと思ってた」
「……気にしないわけ、ないじゃないですか」
遠慮がちにソファに座る彼女が口を開くまで、随分と長い時間のように感じられた。
か細い声は少し上擦ったが、その声に怒りは篭っていないように思う。
「…今まで全部、見ないフリしてきたけど、結局はただのフリです」
確かに、目黒の周りに女が寄ってくる事なんてたくさんあっただろうに、目黒からそれが理由で喧嘩した話なんて一度も聞いた事はない。
それに、目黒はいつもこう言っていた。
“Aは、優しいから”
“怒ったりしないから”
“理解があるから”
だから勝手に、彼女は何に対しても気に留めたりしないものだと思っていた。
…でも、違う。
全部、我慢していただけ。
メンバーとの仕事終わりの飲みも、休みの日に急に先輩に誘われた飯も、そこに女がいたとしても、“話したら分かってくれるから”と誘いを断る事は無かった。
“理解のある彼女”というのは目黒が作り上げた理想で、結局はただの甘え。
とはいえ他人が見ても分かるくらいには彼女を大切にしていたしバカみたいに一途なのは変わらない。
彼女が文句一つ言わなかったのは本当の事だろう。
だけど、気にしてないわけ、なかった。
当たり前だ。
Aちゃんは、普通の女の子なんだ。
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バンビ(プロフ) - 弥生さん» 弥生様、コメントありがとうございます。こんなめめが想像出来過ぎて私も苦しいです。笑 最新作の照君も、どうぞよろしくお願いします。 (2022年4月26日 20時) (レス) id: 3e6ac61619 (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - シリーズ楽しく読ませて頂いてます。この作品のめめがめめ過ぎて苦しー!ってなりました。最新作も更新を心待ちにしています♪ (2022年4月26日 17時) (レス) id: 7916499826 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - ねこさん» ねこ様、コメントありがとうございます。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。 (2021年11月21日 22時) (レス) id: 7af38d1460 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - すごく素敵なお話で大好きでした。完結おめでとうございます^_^ (2021年11月21日 22時) (レス) @page44 id: b63bd495ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2021年10月16日 18時