メリー・ウィドウ

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「で？何でそんな調子なわけ、最近」












「ほんまやで、心配んなるわ」














呆れたように投げかける二人に、そんな風に見えてるのかと他人事みたいに考えながら運ばれてきたビールを煽る。













「彼女がいても幸せって訳じゃないねんなぁ」














「そりゃ恋愛くらいで浮かれないでしょ、この歳で」













「じゃあ恋愛くらいで人に心配されんなよ、この歳で」













ぐうの音も出ないとはこの事だろうか。















分かってる。














一緒にいる時間の長い康二も、周りをよく見てくれているふっかさんも、些細な変化に気付いてくれるくらいには心配してくれていて。













一番距離のある斜め向かいに座る翔太くんも、興味無さそうに見えて何か言いたい事があるんだろうなと思うには簡単で。















ため息が出そうになって、きっとそれはみんなの方なんだろう、なんて飲み込めば代わりに溢れそうになったものは、我慢したせいなのだろうか。














「この際だからはっきり言うけど、お前、Aちゃんと別れてからなんか変だぞ」














自分でも分かってた。












だけどそんなのは、別れる前からだ。













だから、別れたんだ。













ただ、今は美咲ちゃんと付き合い始めて一層大きくなった心のモヤに、見て見ぬフリが出来なくなっているだけ。














「…本当は分かってんだろ、その理由」














まるで関係ないみたいに口を閉ざしていた翔太くんが、俺の心を読んだみたいに。













目線を上げずに零れたあまりに小さいそれは、感情を読み取るには難しい。
















翔太くんが考えてる事も、自分の気持ちも、きっと単純であるはずなのに、分からないと自分に嘘をつく。













タバコに手を伸ばしかけて一瞬躊躇い、それから目の前のグラスに手をつけた。
















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