過去の彼 ページ11
…
慧「 …………… そんなの 。俺だって一緒 。」
ふわりと笑って 、目尻の涙をその細い指で拭った 。
よしよし 、って私をなだめるように頭を撫でて 。
慧「 ………… 俺だって 、Aに好きになってもらえるように素直に努力すればよかった 。
…………………… 離れないで 、って 、最初からちゃんと言えばよかった 。」
ね？俺も同じでしょ？って 、いつかみたいに首をコテンと横に倒した 。
慧「 …………… ずっと隠してたこと 、最後に話してもいいかな 。」
” 最後に ”
その言葉に少し力を入れた慧くんは 、店員さんに「 お冷やもらってもいいですか 。」と声をかけてから 、
「 カフェでお冷やっておかしいか 。」と笑った 。
慧「 ……… 俺ね 、母親がだいっきらいだったんだ 。」
持ってきてもらったお水を一口含んで 、ため息と一緒に 、呟いた 。
慧「 家事もろくにしない 。稼いでくる親父にも文句ばっかり 。弁当だって作れねぇし 、
挙げ句の果てに貯金全部もって家出てったし 、笑 。」
そんなの 、全然知らなかった 。
わからなかった 。
病気で亡くなったお父さんのような人たちを助けるために大学に入った 。
私は 、慧くんの彼女なのに 、慧くんの ” 綺麗な過去 ” しか知らなかった 。
……… 知ろうと 、しなかった 。
.
慧「 だから 。女なんてみんなクソみたいな奴しかいない 。そう思ってた 。」
でもなA 。
今まででいちばんじゃないかってくらい優しく名前を呼ばれる 。
慧「 …………… Aだけは違うって 、直感で思ったんだよ 。」
…
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作者名：りる 。 | 作成日時：2018年4月30日 16時
