深淵を覗くとき ページ8
まじで木兎先輩が早く帰ってくるか何かを話題を見つけないと…!!!
ひとり、勝手に焦っていると、
くすり、と赤葦くんが笑った。
「あ、ごめんね。ひとりで百面相してるから面白くなっちゃって」
「あ、え、」
「静かな人だと思ってたんだけど、案外表情豊かなんだね、Aさん」
私はプチパニックだった。ご丁寧に「全集の君」とまで命名したその御本人様に、呼ばれるときが来るなどとは思っていなかったから。
「…なんで名前知ってるの?」
「図書委員会の名簿。どうしても気になっちゃって」
いやいやいや、なんかおかしな方向に進んでない?違うよね?「おもしれー女」パターンがどこかで発生していたかもしれないけど、私は赤葦くんと本当に最近まで接触すらしてなかったんだよ?!
困惑やら焦りやら何やらで震えが止まらん。陰キャにはキャパオーバーだコンチクショウ。
そんな私に気づいているのかいないのか、赤葦くんは続けて言う。
「あの場所、木兎さんに知られたくないんだよね。木兎さんから隠れるために居たからさ。今行ったら知られちゃうだろうから」
「あの場所?」
「そう、あの場所。全集の棚の所の机。あぁ、やっぱりここからよく見えるね」
「そ、そうだね?」
「あそこ周りから全然見えないから、自分からも何にも見えないくせに、カウンターのところだけは、なぜかよく見えるんだよね」
私はだんだん赤葦くんが言わんとしていることの察しが付いてきたような気がして、もう正直逃げ出したい気分だった。
赤葦くんはニヤリと笑って、こう聞いてきた。
「深淵を覗くとき?」
有名な言葉を促される。
「……………深淵もまた、こちらを覗いているのだ……」
私にその言葉を言わせると、赤葦くんのお口は満足そうに弧を描いた。目はあんまり笑ってないけど。
俺のこと、よく観察してたよね?気付いてたよ。
そう、その笑みはまるで獲物を仕留めた猛禽類のようで。
はい、私の人生終わりました!!!!どうせ私はクソキモストーカーオタクですよ!!!!ごめんなさいね!!!!来世ではもっと見目麗しいコミュ力が高い美少女に生まれ変われますように!!!!
私は、蛇に睨まれた蛙ならぬ、猛禽類に今まさに捕食されんとする食料だった。
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作者名:Eもんかけ | 作成日時:2020年10月21日 17時