図書室の赤葦くん【赤葦京治】 (ページ6)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:562 hit

きっかけ1 ページ6

「ねーねー！図書委員の子だよねー？」

がっちり目を合わせてしまって、その眩しさに思わず目をそらす。

「は、はい。そうですが」

　
もしかしたら、騒いでても見逃してほしい、とかそういうことを言われるんだろうか。

それはちょっと嫌だな。

でもそんなの駄目です、って先輩に言う勇気もない。

ほんと、なんなんだろう、この人。

「俺でも読めるような面白そうな本ってある？」

「面白そうな…本ですか？」

うん！！面白そうな本！！

ちょっと小声で、でも閑散としている図書室からしたらだいぶ大きい声で、木兎先輩はそんなことを言う。

言われたことの意外さに面食らっていると、後ろから追いついた赤葦くんが顔を出してきた。

「ちょっと何やってんですか。困ってますからやめてあげてください」

「えー。赤葦がこの図書委員の子のこといろんな本めっちゃよんでて気にな「木兎さん本当に迷惑になりますから読みたそうな本なら俺がおすすめしますからいいですかいいですねオッケーですね？」えー赤葦がおすすめするやつ全部難しいじゃん！ヤダ！」

私は押し問答をしている二人をみてポカンとするしかなくて、でもよくわかんないことも言ってて、口を挟むタイミングさえ掴めずにいた。

それでも、赤葦くんが目の前にいる。

ここはひとつ、木兎先輩に良いところを見せて、ちょっとでも赤葦くんの記憶に残りたい、というやましい気持ちが少しあった。

「あ、あの、木兎先輩に、おすすめの本ありますよ」

「おっ？マジー？！」

目を輝かせる木兎先輩の横で、いつも遠くで文字を見つめていた赤葦くんが、私のことをちゃんと見ていた。