図書室の赤葦くん【赤葦京治】 (ページ2)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:560 hit

図書室にてページ2

気になっている人がいる。

別に恋愛でとかじゃなくて、単純に興味の話だった。

本を読むため勉強のため、ほぼ毎日図書室に通っている私にとって、ここは自分と本と司書さん以外は何も関わらなくて良い自由な時間。

カウンターにいて貸出と返却の作業くらいはする。あと司書さんの雑用を手伝ったり。

そんな私があるひとりだけに関心を持ったことが、自分でもなんだか面白かった。

図書室の一番奥…文学全集と郷土史関連の、先生たちでも滅多に本を探さないような場所。その近くにひっそりと隠れ家のような机がある。

カウンターからはその場所はよく見える。

生徒はほとんど誰も知らない。図書室によく来る生徒でさえ、あまり奥には行かないから知っている人は少ないと思う。

その場所に、週明けの放課後と週末の昼休みに定期的、規則的に訪れる男子がいる。

わかっているのは2年生であること、背が高いことだけ。

勝手に心の中だけで「全集の君」と名付け、決まった日、決まった時刻に来ているのを確認しては、なんとも言えない充足を感じていた。

私は彼がその場所にいるのがとても好きだった。
その奥まった場所は全集の君にたいそう似つかわしくて、小説の1場面に描かれるような雰囲気があった。

いつも何を読んでるんだろう。

決まった時にしか来ないのはなんでなんだろう。

いろいろ気になることがたくさんあった。