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怖い、
怖い、
怖い………
"大人気モデル「
目隠し、頭の上で拘束された両手、縛られた両足、口にはタオルのようなものが巻き付けられ声を出すことも叶わない。
すぐ近くにテレビがあるのだろう、聞き馴染みのあるアナウンサーの声から察するにこれは朝9時から始まる情報番組。毎朝見ていたんだ、2日前までは。
「カメラに残ってたか。ようやく俺たち2人の幸せな生活を手に入れたってのに、邪魔が入ったら笑えねぇぜ………なあ、A？」
耳元で囁かれた声に思わず鳥肌が立つ。
誘拐されてから1度もコイツの顔は拝んでいないが、それでも分かる。この声は間違いなく1ヶ月前に解雇したマネージャーだ。
かつては兄のように頼れる存在だった。しかしその言動に違和感を覚え始めたのは彼の態度が徐々に「マネージャー」から「彼氏面」へと変わっていったから。
社長に話を通してマネージャーを変えてもらった。しかしそれ以降もストーカーのように付き纏われ、話は発展し解雇に至ったわけだ。
そんな彼は今、私を縛り、閉じ込めている。
「そもそもAと俺を引き裂く会社がいけないんだよな、俺たちの愛はそんなんじゃ終わらないのに。
Aは外に出たらダメだ、ずっと俺の近くにいれば良いんだ……Aもそれが1番幸せだろ？」
………怖い。
話の内容は言うまでもなく狂っているし、私の頬や首筋を撫でる手つきが気持ち悪い。もちろん私たちの間に「愛」なんてものは存在しない。解雇による逆恨みのほうがまだ納得できる。
でも残念ながら、犯行動機は「愛」
「…………誰かに見つかってこのまま終わっちゃうより、今から2人で一緒に死んじゃう？」
歪んだ愛ほど恐ろしいものはない。
優しく首筋を撫でていたその手が、次は私の喉を締めるように纏わりつく。
声も出ない、身動きも取れない。このまま誰にも見つからず、こんなイカれたやつに殺されてしまうなんて、私の人生なんて運がないんだろう。
恐怖と悔しさで涙が零れた瞬間、
ﾄﾞｶｧｧｧｧｧﾝｯ
「…よう、テメェが誘拐犯か。死ね」
爆発音と共に入ってきた足音と、物騒な言葉が聞こえた。
続く
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作者名：めーぷる | 作成日時：2023年10月24日 16時
