それぞれのバレンタイン＊女鬼神様編�� ページ49
『では私はこれで』
そう言って踵を返したAを、慌てて白澤が引き止める。
「帰らないでよっ！？」
『……』
ギュッと手を握られて、
さっさと渡して帰ろうと思っていたのに…と、思いながらAは彼を振り返った。
"渡した"というのか微妙なところだが。
「これ、Aが僕に用意してくれたんでしょ？」
たった今箱が潰れたけど。中身はなんとか無事だったし…
『別に、大したものじゃありません』
「でも、嬉しいよ。手作りだよね、このブラウニー」
白澤がそう言って指さした箱の中には、ドライフルーツやナッツが乗っているチョコブラウニーが入っている。
『……味は、お香さんのお墨付きですから。甘さは控えめなので、お酒にも合うと思います』
「うん。
無愛想に言われたけれど、彼女が照れているのがわかって、白澤はニッコリと微笑んでお礼を言った。
「(あ、なんか良い雰囲気だ…良かった…)」と、今度は店内の掃除を始めていた桃太郎は思ったりしていた。
「じゃあ、僕からはこれ」
どこから出したのか、白澤がそう言ってAの目の前に差し出したのは、薔薇の花束だった。
『……キザですね』
「えー、中国じゃ普通だよ」
受け取ってくれるでしょ？と、握られていた手の指先にキスをされて、Aは思わず手を引っこめた。
元々スキンシップは多かったけれど、この男、最近遠慮がなくなった気がする。
まあでも、花に罪はないし…と、再度花束を見つめて、それからそっと受け取った。
『…ありがとうございます。ところで、何故11本なんですか？』
なんとなく薔薇の本数を数えてみたら、11本だった。
10本ならキリが良いからわかるけれど…と思ったので聞いてみたのだが、
「んー？…内緒」
『……』
満面の笑みではぐらかされて、Aは眉間に皺を寄せた。
「あはは、そんな顔しないでよ〜 それよりA、これからデートしよう」
『は？』
突然の申し出に、彼女は驚いたように白澤を見つめる。
「バレンタイン…
『自分で言いますかソレ』
「(ああ、だから白澤様、数日前から色々準備してたんだな…)」
ぼんやりそんなことを思っていた桃太郎に、
「そんな訳で…桃タロー君、店番よろしく〜」
と、白澤は手を振ったのだった。
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めぐりずむ(プロフ) - コメントありがとうございます！励みになります…(๑•̀ㅂ•́)و✧お恥ずかしいとのことで削除依頼されていたので、消させて頂きましたが、すごく嬉しかったです！ (2022年9月17日 1時) (
レス) id: ef3bd6ce41 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - とても面白いです｡ (2021年11月7日 0時) (レス) id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めぐりずむ | 作成日時：2021年9月23日 23時
