神獣様と女鬼神様�� ページ24
「A様ー！」
仙桃農園の奥、岩に腰掛けてぼんやりと桃の実たちを眺めていたAが、声の主を振り返った。
『…シロさん』
駆け寄ってきたシロが、心配そうに顔を覗き込んで来る。
「泣かないで？」
『…泣いてません』
「でも、悲しそうだよ」
白澤様、酷いよね！
プンプン怒っているシロに、柿助とルリオも追いついて来た。
「A様、大丈夫ですか？」
「気にしちゃダメっすよ」
『別に、あの男のことはいいんです。気にしてませんから』
そう言っても、Aの表情は暗いままだった。
──話は過去に遡るが、
彼女がまだ、ヒトだった頃。神代の頃の話だけれど。
実は一度だけ、
村人の中では余所者扱いされ、更に召使いだったA (この頃はまだ丁という名だった)は、仕えていた家主の命で、毎朝川に水をくみに行かされていた。
川の水は冷たくて、水の入った水瓶は重たくて、幼い少女には酷な仕事だったけれど、そうでもしなければ食事を分けて貰えなかったのである。
そしてある日、いつものように川へ水をくみに行った際に、川辺で(酔っ払って空から転げ落ちてきて)気絶していた白澤(本来の姿)を発見して、介抱してあげたのだ。
気がついた白澤が人型になって「僕は白澤、自分で言うのもなんだけど神獣だよ〜」と自己紹介してきたのを見て、
当時の丁は驚きつつも『神様も空から落っこちたりするんだな…』なんて思っていた。
「君はこの近くの村の子？お名前は？」
『丁です。召使いの…』
「えっ！？君、召使いなの！？」
こんなに可愛いのに！？
白澤は驚いたように目の前の少女を見つめた。
『可愛い？』
対する丁は、生まれて初めて「可愛い」なんて言われて
『私が…だろうか？』と首を傾げていた。
「そっか、だから水をくみに来てたんだね…」
こんな小さい女の子に…酷なことするなぁ〜…
『でも、私の仕事ですから』
と、何でもないことのように言う丁を見て、白澤は眉間にシワを寄せる。
彼女に対して、ではなく、幼い少女にそんな発言をさせるような振る舞いをしている村の大人たちに嫌悪感を抱いたのだ。
「手…冷たいでしょ」
突然、白澤にギュッと手を握られて、丁は目をしばたたかせる。
『…神様も、手は温かいんですね』
冷えきっていた手が彼の手の熱でじんわりと温められて、丁はほんの少しだけ微笑んだのだった。
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※幼名はそのまんまです。
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めぐりずむ(プロフ) - コメントありがとうございます！励みになります…(๑•̀ㅂ•́)و✧お恥ずかしいとのことで削除依頼されていたので、消させて頂きましたが、すごく嬉しかったです！ (2022年9月17日 1時) (
レス) id: ef3bd6ce41 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - とても面白いです｡ (2021年11月7日 0時) (レス) id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めぐりずむ | 作成日時：2021年9月23日 23時
