雪�� ページ8
「こうして鍋等を中で行う際も、多少の雪溶けはあっても入口から入る冷たい外気で冷やされ、また固まります。八寒なら尚更ですね」
「へー！」
「かまくらが完全に溶けるのは、日光や春の気温といった外気温が高い場合ですが…」
そこまで言ってから、鬼灯は入口の外側からコチラを覗いている春一に目を向けた。
「八寒はそもそもお天道様に縁がないからよう。あ、摩訶鉢特摩だとガチガチに凍るよぅ」
「そりゃあな…」
「逆にもう二度と溶けなさそうだよな…」
「というか、そういう拷問の地獄じゃなかったか？」
柿助とルリオが、「絶対にそんな過酷で超極寒な地獄では働けない…」と首を振る。
『別名「大紅蓮地獄」だもんねぇ…』
「…大紅蓮？」
「おや、説明しませんでしたっけ」
またもや首を傾げたシロに、鬼灯は「大紅蓮」と呼ばれる所以を教えてあげた。
……とても痛々しい感じなので、ここでは割愛する。
普段から不喜処で亡者を齧っているシロだが、話を聞いて「え、寒さでそんななるの！？八寒怖い！！」と顔を青ざめさせた。
「怖いね」
「スプラッターだね」
「童子ちゃんたち全く怖くなさそう！？」
無表情で言ってのけた一子と二子を見て、叫ぶシロ。
───とまあ、そんなこんなで、雪遊びもお鍋も満喫した一行なのだった。
春一、ポラリスと別れて、八大へと歩きだしたAは、左右にいる双子に声をかける。
『一子ちゃん、二子ちゃん、八寒地獄はどうだった？』
「楽しかった」
「鍋も美味しかった」
『良かったー！また遊びに来れたら、お邪魔させてもらおうね』
「次来る時は、かき氷のシロップ持ってくる」
「いちご味」
『うん。それはやめよっか』
手をあげてそう告げてきた双子に、Aはやんわりストップをかけた。
「ねえねえ！八大の扉まで誰が速いか競走しようよ！」
というシロの一言で、一子と二子も桃太郎ブラザーズに次いで駆け出す。
『皆、転ばないようにねー！』
元気だなぁ…と、Aが2人と3匹の背中を見送っていると、ふと右手を引かれた。
『鬼灯君？』
どうかした？と隣に立った彼を見上げる。
「…寒いので早く帰りましょう」
せっかく鍋で暖かくなった身体が冷えます。
ボソッと呟いた鬼灯は、ギュッとAの手を握り直す。
先程まで彼女の左右の手は双子に取られていて、少々モヤモヤしていたのだ。
『うん！』
鬼灯の意図がわかったAは嬉しそうに頷くと、彼の手を握り返して一緒に歩き出した。
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作者名：めぐりずむ | 作成日時：2023年9月25日 13時
