【鬼灯の冷徹】地獄の閻魔様に成りました【其ノ八】 (ページ20)

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墓守アヌビスの日本訪問⑫ ページ20

『漢方のことなら、白澤君に聞けば早いと思ったから……ごめんね？』

今回は、「ミイラ作りに使いたい」というアヌビスからのリクエストだったし、それが最善だと思ったのだ。

『私が1番に頼りにしてるのは、鬼灯君だよ』

鬼灯の手をギュッと握って、再度告げる。

独学で東洋医学について学んでいるのも、勉強熱心なのも知っている。
獄卒になってから、補佐官になるまですごく努力していたのも知っている。

そうじゃなきゃ、こうして隣に立っていないだろう。
頼もしくて、いつも助けられてばかりだとAは思う。

『(私の隣に立つため…って、自惚れてもいいかな)』

白澤のことは認めたくないけれど、でも彼の漢方の専門知識については認めているのも知っている。
鬼灯本人は、口には出さないけれど。

『私は、鬼灯君のそんな勉強熱心で努力家なところ好きだよ』

「……ズルいですよ」

Aの言葉に絆されたらしく、鬼灯は目の前の彼女を抱きしめると「やれやれ敵いませんね」と小さくため息をついた。

『ふふふっ』

Aも鬼灯の背中に手を回して、あやすようにぽんぽん撫でると、「子供じゃないんですが」と抱きしめる力が強まった。

───数分後、

『鬼灯君、あの…お茶入れなきゃ』

いまだに抱きしめられたままのAが、ちょっと困ったように鬼灯を見る。

「アイツにはセンブリ茶でも出しておけばいいんです」

『こら、アヌビスさんも居るでしょ』

センブリ茶は、テレビの罰ゲームなどでもよく使われる、めちゃくちゃ苦いお茶だ。

後味もかなり続き、正直言って超絶不味い。
「良薬は口に苦し」というが、飲んだ後逆に気分が悪くなるレベルである。

それでもセンブリは生薬の一種なので、
Aは『白澤君なら飲めそうだけどな』なんて思ってしまった。

『アヌビスさん、漢方の勉強できてると良いけど…』

「そこは大丈夫でしょう。あんなの(・・・・)でも一応神獣ですから……って何ですかその顔」

『ううん。何でもないよ～』

怪訝な顔でこちらを見てくる鬼灯から離れて、Aはニコニコしながらお茶の準備に取り掛かったのだった。

さて、そんな2人が戻るまでに、アヌビスとシロの間でエジプト観光旅行の話が持ち上がっていたのだが……それはまた別の話。