墓守アヌビスの日本訪問�� ページ19
『鬼灯君っ！なんてこと言うのっ』
鬼灯のトンデモ発言に、Aも驚いて叫ぶ。
「そうだそうだ！最低だぞこの腹黒鬼神…痛ァッ！？」
Aに便乗して抗議した白澤だったが、即座に鬼灯から目潰しをくらっていた。
ちゃんと額の目も狙ってくるあたり、全く容赦がない。
『こら！暴力はダメですっ』
Aが鬼灯の袖を引っ張って注意しているのを見て、アヌビスはこちらの様子を見ている桃太郎ブラザーズに尋ねた。
「あの…先程も思ったのですが、鬼灯様とあの方はあまり仲がよろしくないんですか」
「あまりっていうか、めちゃくちゃ仲悪いですね」
「うん。顔合わすといっつも喧嘩してるよ！」
「根本的に合わないんだろなー」
特にA様が絡むと…と、3匹は遠い目をする。
毎度のことなので、もう慣れてしまったが。
「ミイラは薬になるという俗信がありますが、神獣のミイラなら本当に薬になるでしょう。それを極楽満月で売るといい」
「コイツ…」
白澤に睨まれても、鬼灯は意にも介さず知らんぷりをしている。
「あの、イヤ〜…その「薬になる」って俗信がウチの墓を荒らされた主な原因なので、ちょっと…」
それこそ、万能薬と呼ばれて他国や江戸時代の日本でも売られていたらしく、「もうホント勘弁して欲しいです…」とアヌビスは苦笑した。
『ほら、アヌビスさんも困ってるでしょ！』
このままじゃ埒が明かないと察したのか、Aは鬼灯の腕を引いてその場を離れた。
『漢方のことを勉強するせっかくの機会を、邪魔しちゃダメ』
いまだ不服そうな彼に、腕を引いて歩きながら『今更だけど、お茶もお出ししてないし…鬼灯君、手伝ってくれる？』と頼んでみる。
「……」
『(……まだ拗ねてるな…)』
チラッと彼の表情を伺って、Aは思った。
『(鬼灯君、時々こういう子供っぽいところあるんだよね…)』
傍から見たら対して変化のない表情を読み取れるのは、付き合いの長い彼女の特権でもある。
可愛いって言ったら怒るかな…なんて考えていたら、顔に出ていたのか頬が緩んでいたらしい。
「何ニヤニヤしてるんですか」
不機嫌そうに言われて、慌てて真剣な表情に戻すと、Aは鬼灯に向き直った。
『私は鬼灯君のこと、頼りにしてるよ』
「でも今日、真っ先に思いついたのはあの男ですよね」
案の定、少々トゲのある返答が返ってきて、思わず苦笑する。
どうにも、彼は白澤と比べられるのを嫌っている。
まあそれは向こうも一緒だが。
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作者名：めぐりずむ | 作成日時：2023年9月25日 13時
