【鬼灯の冷徹】短編集其ノ三【成り代わり】 (ページ6)

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女神獣様と2人の悪女⑥ ページ6

「開けてみて下さい」

と、渡してきた当人に言われて、Aはプレゼントっぽくラッピングされた小さな箱を、戸惑いつつも開けてみた。

『……耳飾り…？』

中には、ロングチェーンタイプの耳飾りが入っていた。
透き通った水色のガラス玉や白い花、更には小さなウサギのチャームもついている。

普段彼女は片耳にしか耳飾りをつけていないからか、これもちゃんと片耳用だった。

『……可愛い…』

思わず口から出た言葉を誤魔化すように咳払いをすると、Aは鬼灯に向かって言った。

『ま、まあ、もらってあげないこともないヨ』

お前にしてはセンス良いもの選ぶじゃん～
と言ってから、素直に『ありがとう』と言えなかったことを少し悔やむ。

「つけてみたらどうですか」

『えっ！？今！？』

まさか、今つけろと言われるとは思っていなくて、Aは目の前の彼を見上げた。
何故か、めっちゃコチラを見つめてくる。

『あーもうっ、つければいいんでしょっ』

視線に耐えきれなくなってそう叫ぶと、鏡を見るために一旦自室に引っ込んだ。
何なんだもう…と呟きながら、いつもの耳飾りを外して、先程もらったばかりのものをつけてみる。

やっぱり可愛い…なんて思ったことは内緒だ。

『はい。…つけたけど』

これで文句ないでしょ？と鬼灯のところに戻ると、

「似合ってますよ」

『っ……！？』

するりと耳にかかっていた髪の毛に触れられて、Aは思わず固まった。

『(コイツ、この前くらいから変だ…！！いや、元々変だけどっ…)』
なんか、距離の詰め方が近い…ような……

じわじわ熱くなってきた頬に彼の手が添えられて───

──そのまま頬っぺたを軽く引っ張られた。

「間抜け面ですね」

『…はぁ！？』

なんで突然ディスられなきゃいけないワケ！？
やっぱりコイツ腹立つ！！と、Aは鬼灯を睨みつけた。

『もう帰れ！！このっ…』

今度こそ手を振り払って、そのまま突き放そうとして、また固まる。

『(あれ？今コイツ微笑んでた…？)』

彼が微笑むところなんて見た事がなかったので、少し…いやかなり驚いたのだ。

『(ま、まさかね！？見間違いだ絶対。うん)』
そう自分に言い聞かせて、Aはチラッと再度鬼灯の顔を見てみた。

いつもの真顔だ。

コイツが微笑むなんて、天地がひっくり返っても有り得ない！と、Aは自分に言い聞かせると、今ほんのちょっとドキドキしたことは忘れることにした。