【鬼灯の冷徹】短編集其ノ三【成り代わり】 (ページ5)

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女神獣様と2人の悪女⑤ ページ5

『アイツ、絶対ろくでもないからやめときなよ～』

というか、リリスちゃんは旦那さん居るんじゃ…？
と苦笑しているAと、何か言いたげにしている鬼灯を交互に見て、リリスと妲己は顔を見合わせる。

2人ともお互いが考えたことがすぐにわかり、ニヤッと笑って立ち上がった。

「A様がヤキモチ妬かれてるみたいだから、私たちはそろそろお暇するわ」

「そうねぇ～」

突然そんなことを言われたAが、またもや目を剥く。

『！？ち、違っ…』

妬いてないよ！？そういうんじゃないしっ！！と慌てて否定するも、既にリリスも妲己も聞いていなかった。

「そうだわ妲己、衆合地獄の花街案内してよ」

「あら、いいけど…旦那に怒られない？」

「大丈夫よぉ～」

『ちょっと2人ともっ…』

花街に向かう話をしながら店を出ようとする2人を必死に引き止めようとAが声をかけると、

「「じゃ、A様、頑張ってね♡」」と、ウインクされた。

『何を！？』

無情にも扉が閉められて、その場に立ち尽くす。

『………』

「…………」

店内に微妙な空気が流れて、Aは視線をさ迷わせた。
従業員のウサギたちだけが、店内をちょこちょこ動き回っている。

『(……気まずい…)』
桃タロー君、早く帰ってきて！！と祈ってみるも、彼女の弟子が帰って来るのはまだまだ先。

いやなんで自分の店で、こんな気まずい思いしなきゃならないんだ！！と思い直し、部屋の隅に居た鬼灯に声をかけた。

『よ、用がないなら帰ってヨ』

商売の邪魔！！と、店の扉を指さす。

「用ならありますよ」

『何？生薬の買い付け？それとも材料？』

それならさっさと済ませて欲しい。
こっちだって暇じゃないのだ。と言おうとして、先程まで悪女2人とワイワイお茶していたのを思い出して口を噤んだ。

「はて？先程まで仕事を放り出して、楽しげにお喋りしてましたよね？」とかなんとか、嫌味を言われるに決まってるのだ…と思っていたAの目の前に小さな箱が差し出された。
いつの間にか鬼灯が近くに居て、ちょっとビックリする。

『……何コレ』

また変なものじゃないだろうな…と、箱と鬼灯を交互に見やる。

「現世出張に行ったので、お土産です」

『は？(…おみやげ？……コイツが？ボクに？)』

どういう風の吹き回しだろう…何か仕掛けられてるんじゃ…と、訝しげに箱を見つめていると、
「失礼ですね。何も仕掛けちゃいませんよ」とそのまま手の上に箱を押し付けられた。