【鬼灯の冷徹】地獄の閻魔様に成りました【其ノ五】 (ページ44)

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豆とカカオとチョコレート⑨ ページ44

『…でも、本当のこと言うとね、皆が鬼灯君にチョコあげてるの、ちょっと悔しかったんだ』

いつもは、私が誰よりも先に渡してるから…
先越されちゃったなぁ～って。
いや、渡していいって許可したのは自分なんだけど…

彼に渡そうと思って取り出したチョコの箱を見つめて、Aはポツリと呟いた。

「貴女という人は……」

頭を抱えて鬼灯はまたもやため息をつく。

『私のチョコ、貰ってくれる？』
なんちゃって。ちょっと言ってみたかったんだ。

Aが照れたように微笑んでチョコが入った箱を鬼灯に向かって差し出すと、そのまま手首を掴まれて彼に引き寄せられる。

「……貴女ごと頂いても良いんですよ」

『もうっ…すぐそういうこと言う…』

耳元で囁かれて頬が熱くなるのを感じながら、Aは彼を見つめた。

『(うん。もういつもの鬼灯君だな)』

「嫌ですか？」

『い、嫌じゃないけどっ』
先にチョコ食べて欲しいな？

鬼灯の手にギュッとチョコの箱を押し付けて、恥ずかしさを誤魔化す。

一方の鬼灯は、
「(おや、誤魔化されてしまいました…)」と、口には出さなかったものの、内心残念に思っていた。

まあ、これくらいで誤魔化されたりはしないのだが。

『今年はブランデートリュフにしてみたの』
味は大丈夫なはず！味見したから！
あっ、1個だけだからね！？

と、聞いていない情報まで教えてくれるAを見ながら、鬼灯はチョコの箱を開ける。

「良い香りですね」

コロンと丸いチョコレートトリュフを指で1つ摘んで口に運ぶ。

『…どうかな？』

「美味しいですよ」

味の感想が気になったのか、食べる様子をジーッと見つめていたAに聞かれて、素直な感想を述べる。

『良かったぁ～！今年のはね、自分でも美味しくできたなーって思っ…』

嬉しそうに告げようとした言葉は、突如振ってきたキスに遮られてしまった。

触れるだけのキスだったけれど、ほんのりチョコレートとそれから洋酒の香りがして、Aは一気に真っ赤になった。

『なんっ…なんで突然っ…』

「チョコだけでは物足りなかったので」

するりと頬を撫でられて、余計に顔が赤くなるのがわかって、Aはその顔を隠すように鬼灯にくっつくと、ボソリと呟いた。

『……鬼灯君の欲張り…』

「鬼ですから」

ギュッと抱きしめ返されながら言われて、

それ、関係あるのかな…なんて思ってAは微笑んだ。