【鬼灯の冷徹】地獄の閻魔様に成りました【其ノ五】 (ページ43)

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豆とカカオとチョコレート⑧ ページ43

『鬼灯君？恵方巻き食べないの？』
美味しいのに…

と、Aは椅子に座っている鬼灯に声をかけた。

あの後、樒とお香とで恵方巻きを作り終えて獄卒皆に配りに行ったのだが、先程から彼の様子がおかしいのだ。

イベントが終わって、部屋に帰ってからもそれは続いているようで、声をかけても心ここに在らずといった感じで反応が薄い。

『(……なんか、ちょっと落ち込んでる？)』

その原因がまさか自分にあるなんて、この時のAは思いもしなかった。

『あ、食べた』

無言でもぐもぐと目の前に置かれた恵方巻きを咀嚼し始めた鬼灯を見て、ちょっとホッとする。

『(良かった…食欲がないわけじゃないみたい)』

恵方の方角向いてないけど、まあこの際仕方ないか。

なんて思いながら彼にお茶を持っていこうとして…ふと、イベント時に使われたカカオ豆が目に止まった。

『鬼は内ー！』

そんな掛け声と共に、恵方巻きを食べ終えた頃を見計らってAは鬼灯にカカオ豆を投げてみた。

突然後ろから奇襲攻撃…じゃなく、豆を数十個投げつけられて、若干驚いたように鬼灯が振り返って言った。

「何するんですか」

あ、ちょっといつもの鬼灯君に戻ったかも。
と思ったAは悪戯っぽく微笑んだ。

『ふふ、私もやってみたかったんだ～豆まき』
意中の人にぶつけるんでしょ？
だったら私が投げる相手は鬼灯君しかいないなって。

「………私へのチョコは無いんじゃなかったですか」

『え？』

彼の若干拗ねたような物言いに、Aは首を傾げた。

どうやら、さっき『ないよ』と伝えたのを『今年のチョコはないよ』と勘違いしているらしい。

鬼灯の言葉でやっとそれがわかって、Aは慌ててラッピングした箱を取り出した。

『ちゃんと用意してるよ！？』
まだ作ってる途中だから、今はないよって意味で言ったつもりだったんだけど…

だから落ち込んでたのね…と色々合点がいって、言葉足らずだったなぁ〜…と少し後悔する。

『ご、ごめんね？でも、毎年あげてるじゃない』
今年はチョコあげないなんて、そんな意地悪なことしないよ？

目の前でわたわたしているAを見て、鬼灯は盛大にため息をついた。

「はぁ……大勢の前で「チョコはない」と宣言された私の気持ちがわかりますか？」

『う……それは…ごめんなさい』

そんなつもりは無かったのだけれど、不安にさせてしまったのなら申し訳ないな…と、Aは再度謝罪を口にした。