【鬼灯の冷徹】地獄の閻魔様に成りました【其ノ五】 (ページ42)

今日:28 hit、昨日:22 hit、合計:26,584 hit

豆とカカオとチョコレート⑦ ページ42

「ところでA、私へのチョコは？」

今年も勿論用意してくれているのだろう…しかし、まだ貰っていないな…と思って、鬼灯は彼女に問いかけた。

『え？(今は)ないよ？』

「は…？」

結構即答で言われて、さすがの鬼灯も固まった。

「「「え」」」

今、A様…「ない」って言った？
え？嘘だよな？
ま、まさか、私たちがチョコあげたから…？

なんて、周りの獄卒たちもざわめいた。

本当はそうじゃなくて、まだ完成していないから『今は渡せないよ』の意味で言ったのだが…
ちょっと言葉が足りなかった。

「A様～手伝いに来ましたよ～」

『あ、樒さん！』

Aが詳細を言う前に、獄卒皆のお母さん的存在、五官王の補佐官の樒が閻魔殿を訪れたので、肝心の鬼灯に説明がされないままになってしまった。

「あら、何だか楽しそうですねえ～」

『あはは…散らかっててすみません』

法廷内の様子を見てニコニコとしている樒に、床に散らばったカカオ豆を避けながらAが駆け寄った。

あちこちに豆だけでなくカカオの実も転がっているので、散らかっているのは本当である。

「後でお掃除も手伝いますね～」と微笑んだ樒は、たすき掛けをして元気よく言った。

「さて、恵方巻き作りましょう！」

『はーい！』

これまた元気よく返事をしたAは、樒と一緒に閻魔殿の食堂、厨房があるほうへと歩き出した。

「あ、アタシも手伝います」
鬼灯様、大丈夫かしら…と思いながらも、お香もそれに加わる。

『皆楽しみにしててね～』

なんて言って手を振るAは、
「ない」と言われたことが衝撃的だったのか、固まったままの鬼灯に気が付かないまま行ってしまった。

残された獄卒たちは思った。

「「「(えええ…めちゃくちゃ気まずい…)」」」

どうしようこの空気…
鬼灯様がピクリとも動かないんだけど…

と、声をひそめて言い合うことしかできない。

自分の爆弾発言でそんな微妙な空気になってしまっているなんて、当のAは知る由もなかった。