豆とカカオとチョコレート�� ページ41
イベント事はやっぱり皆が楽しめるものにしたいし…等、悶々と考えていたAは、意を決して口を開いた。
『皆、お楽しみ中にごめんね』
その声に、豆まきをしていた獄卒たちも静かになって、ピタリと動きを止める。
大勢の人の前で話すのは慣れているけれど、視線が一気に集まってちょっと戸惑ってしまう。
「A？何かありましたか」
隣の鬼灯にもそう聞かれて、彼女は曖昧に微笑んだ。
『えーっと…その…誰かに渡したいものがあるなら、心残りがないようにね？』
慌てて言ったので上手く言葉にできなかったが、
要は『バレンタインのイベントでもあるから、チョコの手渡しもOKです』というような事を言いたかったのである。
その"誰か"は、各々違うかもしれないし、同じ人(鬼)かもしれないけれど。
「A様から許可おりた！？」
「えっ…じゃ、じゃあ！！」
Aの言葉に女性陣たちが、袖に忍ばせていたチョコの箱や袋を取り出した。
「なら私もっ！！」
「あ、ズルい私だって！！」
「実は私も持ってたっ」
そしてそのチョコたちは、鬼灯とAが居る法廷の机(Aが普段亡者の裁判を行なったり、仕事をしている場所である)に積み上げられていった。
「もらって下さるだけで良いんですっ」
「記念にっ」
「むしろA様と召し上がって下さいっ」
なんて言ってチョコの箱を投げる光景は、まるで正月のお賽銭のようだった。
「あの、ちょっと…困ります」
机に積み上げられていくラッピングされた箱や袋を見て、鬼灯がやんわりと制止する。
男性陣も「「「(いや鬼灯様ズルくないっすか？)」」」と声には出さなかったものの思っていた。
「A様、良いんですか？」
お香に声をかけられて、Aは改めて積み上げられたチョコレートの箱たちを見つめた。
『あー、うん……モテモテだね』
わ、わかってたけどすごい量…
「A……貴女が余計なことを言うからですよ」
ジト目の鬼灯に言われて、彼女は気まずそうに返した。
『だって…せっかく皆用意してくれたのに、無下にするのは良くないよ』
「おや、いつぞやのリリスさんの時のように、妬いてはくれないんですか」
『む……そりゃあ、ちょっとは………でも、鬼灯君にチョコあげたいって皆の気持ちもわかるなぁって』
だって私の旦那様はカッコイイもの。
と、ふんわり微笑んで告げたAに、この場に居た皆が思った。
「「「(今、盛大に惚気けられたような…)」」」
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作者名：めぐりずむ | 作成日時：2021年12月15日 2時
