豆とカカオとチョコレート�� ページ40
飛び交うカカオ豆。あと時々カカオの実。
「亡者〜〜外ッ！！」
「イケメンは内っ！！」
「亡者〜〜外ッ！！」
なんかもう、掛け声もおかしな事になっている。
『思ってたより変な行事かもしれないコレ…』
目の前で繰り広げられている光景に、Aは思わずポツリと呟いた。
一言でいうならカオスである。
『(まあ、でも皆楽しそうだし……なにより、主催の鬼灯君が楽しそうだから良いかな…)』
隣で同じく飛び交うカカオ豆(と実)たちを見つめている鬼灯が若干楽しそうにしているのを見て、Aは少しだけ微笑んだ。
「何で鬼に豆ぶつけられんだよォォォ！！」
投げつけられる豆が地味に痛いのか、柱に括り付けられた亡者は半泣きである。
「豆まきって、やってみると楽しいな！？」
獄卒たちは獄卒たちで、ちゃんとストレス発散になっているようだった。
一方では、
「今、俺に豆ぶつけたの誰ーーッ！？」
何処からか自分に向かって飛んできた豆に、相手を探す…
投げた方は恥ずかしそうに隠れる…なんて青春じみた光景も見られた。
「お香姐さん、俺に……」
思いを寄せているお香になんとか豆を投げてもらおうと声をかける唐瓜に、
「あ〜〜カカオって甘くないんだ」
カカオ豆をそのまま齧って、「うえ〜苦いや…」となっている茄子。
遠くからその様子を見ていたAは、
『(唐瓜君、頑張れ……！！)』と拳を握って内心応援していた。
「ああっ！？お前犬なんだからカカオはダメだよっ」
ちゃんと参加していた桃太郎ブラザーズの内の1匹、柿助の声が聞こえてそちらに目を向けると、シロがカカオの実をくわえて嬉しそうに走っていた。
カカオに含まれる成分は、犬や猫、鳥類にとっては有毒なのである。
『シロ君、大丈夫かな…』
食べないとは思うけど…と、シロが走って行った方向を見つめていたAは、ふと、あることに気がついた。
さっきから女性の獄卒が何人か、ソワソワしながら鬼灯のほうをちらちら見ているのだ。
当の本人は気がついているのかいないのか、
「思った以上に凄い光景ですねぇ〜…愉快愉快」
なんて言って手を叩いている。
『(皆、鬼灯君に豆投げたりチョコ渡したりしたいのかな…)』
私が居るから…だよね？
いやいやでも、彼は私の旦那様であって…
ううん、人気があるのは喜ばしいことなんだけどっ…
複雑な気持ちが芽生えて、Aは両手を握りしめた。
『(でも、せっかくのイベントだし…)』
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作者名：めぐりずむ | 作成日時：2021年12月15日 2時
