【鬼灯の冷徹】地獄の閻魔様に成りました【其ノ五】 (ページ39)

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豆とカカオとチョコレート④ ページ39

何やら準備に取り掛かった鬼灯を見つめながら、ふとAは思った。

『あ、せっかくだから恵方巻き作ろう！』
樒さんにも手伝ってもらって…そうしたら結構な数作れるかな？

節分も兼ねたイベントなので、参加者に振舞おうと思ったのだ。

善は急げと、Aは五官王の補佐官である樒に連絡を入れたのだった。

───さて、そんなイベント(バレンタイン)当日。

「女性の皆さん、この際ハッキリ堂々とこの場で告白してしまいましょう」

鬼灯が言い放った言葉に、隣に居たAは思わずツッコミを入れた。

『何それ公開処刑！？』
そんなイベントなの！？それはちょっと酷なのでは…

と、鬼灯をちらりと見る。

「ハッキリ言うって…」
「ムリムリムリ」
「そのためのチョコレートなんじゃ…」

女性の獄卒たちも、若干引き気味に首を振ったりしていた。

「確かに声で言うのはキツイですから…これを用意しました」

そう言って鬼灯が取り出したのは、枡に入った黒い豆だった。

「「「……黒豆？」」」

「カカオです」

「「「！？！？」」」

カカオ！？と法廷内に集った獄卒の誰もが思っただろう。
チョコレートの原材料の、あのカカオ豆である。

『昨晩、何か準備してると思ったらこれだったのね…』
鬼灯君、こういうイベント時の準備は余念がないというか、用意周到だからなぁ…

と、Aは鬼灯が持ってきたであろうカカオの実を見つめた。

「今からこれを全員に配ります。女性は意中の男性にこのカカオ豆を思いっきりぶつけて下さい」

それはそれで、誰が誰を好きかバレてしまうのでは？
と、皆がざわめく。

「男性と想い人のいない女性は、亡者へぶつけて下さい」
そこの、閻魔殿の柱に括りつけてあるので…遠慮なくどうぞ。

鬼灯が獄卒の皆が整列している後ろを指さして言った。

「「「節分・バレンタインちゃんぽん！？」」」

「ついでにモテ男は痛めつけられ、非モテは多少スッキリできます。実もどうぞぶん投げて下さい」

カカオの実を握りしめて言う鬼灯に、

「それ、ドMの勝利ですよね？」

と、獄卒の1人が引きつった顔で返す。

柱に縛られている亡者たちは「何！？何が始まんの！？」と青ざめていた。

「これはお祭りです。ストレス解消と思って下さい」

『えっと…皆さん、怪我だけはしないように…ね？』

説明を終えた鬼灯の隣で、Aは困ったように微笑んだ。

「始め！！」

その一言で、世にも奇妙なイベントが始まったのだった。