【鬼灯の冷徹】地獄の閻魔様に成りました【其ノ五】 (ページ2)

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レディはショッピングがお好き② ページ2

「……」

バーゲンセールという言葉を聞いて、お店のほうを見つめてそわそわとし始めたお香に、鬼灯が声をかけた。

「いいですよ見てきても。休憩時間として」

「ホ…ホントですか！？ちょっとだけ行ってきますっ」

『50%オフは見逃せないよね』

可愛くて人気のブランドなら尚更だ。

嬉しそうにしているお香の隣で、Aはうんうんと頷いて言った。

「良かったらA様も…」

『あ、私はいいよ～』

Aは、お香の誘いをやんわりと断る。

「そうですか？それじゃあ…」

そう言うと、お香は1人でお店のほうへ向かって行った。

「(バーゲンは女性の本気(フルパワー)を観察するのにちょうどいいので…)」

『……とか、考えてるんだろうな…』

彼が内心考えていることが何となくわかってしまったAは、盛り上がっている女性たちをジーッと眺めている鬼灯をチラリと見て思った。

「A、貴女は行かないんですか？」

『うん。私が行くと、皆に遠慮させちゃうから…』

鬼灯に問われて、彼女は困り顔で微笑んだ。

実際、自分があの場に向かったとしたら、
「あ、閻魔様…！」「あの、お先にどうぞっ！」
「私たちのことはお構いなく！」
とか、絶対遠慮されて譲られてしまうとAは思ったのだった。

まあ、気がつかれずに弾き飛ばされそうな気もするけれど。

「…なるほど」

納得していた鬼灯は、
「(そういえば、彼女と買い物に来たことはあっても、こういう場に出くわすのは初めてかもしれない…)」
なんて思っていた。

「すみません。キープは3着まででお願いしま～す」

そう店員さんに声をかけられている人や、お互いキープしていた服を交換している人たちを見て、鬼灯は隣に居るAに向かって言った。

「やみくもに奪い合い…というわけではないんですね」

『一応ちゃんとルールを定めとかないと、それこそ争いに発展しちゃうから…』
お店によって違ったりもするし、守らない人もいるけどね…

そんな話をしていたら、聞き覚えのある声が聞こえてきて、2人はそちらに目を向けた。

「どきな！オババ共！」

そう言ってミセス服売り場にて、他の人が持っていた服を「必殺はぎとり！」と奪い取っていたのは、普段は三途の川にて亡者の服を剥ぎ取っている奪衣婆だった。

「ギャアッ奪衣婆！？」

服を奪われたご夫人方が叫んでいるのを見て、

『奪衣婆さん…』
あのお婆ちゃんは本当に自由だな…

と、Aは頭を抱えたのだった。