【鬼灯の冷徹】地獄の閻魔様に成りました【其ノ四】 (ページ50)

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注文の多い地獄軒⑨ ページ50

さて、新地獄と猫獄卒募集のことが雑誌やら新聞やらの記事になり、更にはテレビでも取り上げられて数日後──

見事な食品サンプルで出来た待ち伏せハウスの周りには、外国から来た観光客たちと、それから募集要項を見て集った猫たち、そしてそれに対抗するかのように集まった犬たちが沢山いた。

「猫に負けてたまるか！」
「犬に負けてたまるか！」

ワンワン！ニ゛ャーニ゛ャー！
と、お互いに言い合いながらも、的確に亡者を襲っている。

『な、なんか、わんにゃんパニックって感じだね…』
もはや、注文の多い料理店の原型留めてないし…

鬼灯と一緒に様子を見に来たAが、呆気にとられて呟いた。

「やはり、仕事というのは仲間とライバルが両方いる時、出来も効率も良くなるんです。これでしばらくダラケず活性化しますよ」

鬼灯はそう言いながら、新規で来た猫たちの履歴書を受け取っている。
ちなみに、余程のことがない限りは即採用である。

新地獄も設立できて、猫獄卒も集められて、更には競争意識も高められて仕事の効率化も図れて、一石三鳥といったところだ。

『漂ってくるいい匂い嗅いでたら、お腹空いてきちゃった…』

履歴書を持ってきた猫たちの対応も終わったところで、Aがポツリと言った。

そんな彼女を見て鬼灯も立ち上がると、

「ちょうどお昼ですし…久しぶりに、外に何か食べに行きましょうか」と手を差し伸べる。

『うん！何がいいかな～』

その手を握ると、Aは嬉しそうに微笑んで何を食べに行こうか考え始めた。

「注文の多い(人気の)レストランでも行きますか？」

『ふふ。でも今は私、ラーメンが食べたい気分かも』
半チャーハンと餃子もつけちゃおうかな～

彼女の意見は、食品サンプルによる効果だろうか。

「そこは大盛りじゃないんですね」

『そんな、鬼灯君みたいに食べれないよ…』

「でもデザートはよく食べてるじゃないですか」

『デザートは別腹だもん！』

繋いでいないほうの手をギュッと握って力説するAに、

「貴女は、もし目の前にお菓子の家があったら、そのまま誘い込まれて行きそうですね」

と鬼灯が言った。

『そっ、そんな事ないよ！？多分…』

「多分ですか」

『鬼灯君は…目の前に妖しいお屋敷が出てきても、嬉々として乗り込んで無事に帰ってくるタイプだよね』

「…そうでしょうか」

『絶対そうだよ！』

そんな他愛ない会話をしながら、手を繋いで歩いて行く。

今日も地獄は平和なのであった。