注文の多い地獄軒�� ページ49
「小判さん」
頭によじ登っていた小判に、鬼灯が声をかける。
「是非「猫募集」の宣伝にご協力願えませんか？」
「合点でィ！猫の名にかけて大々的に記事にしてやりまさァ！！」
ここまで言われて黙ってるなんざ、男が廃らァ！！
興奮状態の小判の叫びを聞いて、
『(鬼灯君、多分これが目的だったんだな…)』とAはため息をついた。
だからわざわざ彼らを引き合わせて、尚且つ小判を含むマスコミの猫たちが、こぞって猫募集の記事を書くように仕向けたのか…と。
そんな犬猫のやり取りをずーっと見ていた雉のルリオが、ポツリと呟いた。
「犬や猫はいいよなァ……メジャーで……」
「……日本の国鳥じゃん。自信持てって…」
という猿の柿助の慰めにも、
「…1万円の裏からリストラされたのにか？」
と、遠い目をして返している。
シロもルリオの気持ちを察したのか、「あっ…ごめん…」とちょっと冷静になったようだ。
落ち込んだ様子のルリオを見て、Aは慌ててフォローする。
『私はルリオ君のこと好きだよ！』
雉、かっこいいもん！
「A様…」
自分に目線を合わせるためにしゃがんで力説してくれた彼女を見上げて、ルリオは感動した。
…ほんの一瞬だけ。
すぐさま嫌な予感がして、彼はそちらに顔を向けた。
近くに居た鬼神様から黒いオーラが出始めている。
どうやらAの、「好きだよ」という言葉が良くなかったらしい。
ルリオからしてみれば、理不尽である。
「……今夜は雉鍋にしましょうか」
「イヤあの勘弁して下さい……」
じりじりと近寄ってきた鬼灯に、慌ててルリオは首を横に振る。
こんなことでヤキモチを妬かれて鍋にされるとか、ホント勘弁して欲しい。
これだったらマイナーな動物で居たほうが何十倍もマシだ。
『こらっ！鬼灯君っなんてこと言うの！？』
Aに叱られて、鬼灯はルリオににじり寄るのを止めると、彼女に向き直った。
「貴女が、誰彼構わず「好き」とか言うからですよ」
『もう…そういう意味で言ったんじゃないのに…』
Aと鬼灯のやり取りを見た犬獄卒たちも取材班の猫たちも、哀れんだ目で巻き込まれたルリオを見つめている。
「あっ、ほらルリオ、目立ってるよ！」
元気づけようと思って声をかけたシロだったが、
「シロ、フォローになってないぞ…」
柿助にはそう言われ、
「全っ然、嬉しくないんだが…」
ルリオにも盛大にため息をつかれてしまったのだった。
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作者名：めぐりずむ | 作成日時：2021年10月1日 6時
