時には昔の話を㉑終 ページ21
Aは、『自分で色々話しておいてなんだけど、恥ずかしい…』と赤くなった頬を手で押さえた。
「そういえば、A様は指輪してるけど…鬼灯様はしてないね？」
「ああ、これですか？」
シロの問いに対して、鬼灯は首にかけていたネックレスのチェーンを出して見せた。
「亡者を拷問する際に、失くしたり傷ついたりしたら嫌ですからね」
普段はこうして、首にかけてるんです。
「なるほどー！」
「ね、ラブラブでしょう？」
昔からこんな感じなのよ〜と、お香が微笑んだ。
「あのさあのさ！もう1つ聞いていい？なんで、閻魔"大王"なの？」
A様、小柄だよね？
『ああ…それはね──』
Aは、イザナミと交わした会話を思い出した。
「姫じゃなんか格好つかぬし…いや、わらわは可愛くて良いと思うが…女王だとわらわとキャラ被りするし……うむ。威厳を持たせるために大王とかで良いじゃろ」
『そんな適当なっ！？』
私、大きくないですよ！？
「大らかの"大"じゃ」
それにAは、大きな優しい心を持っておるから大丈夫じゃ！
『無理矢理すぎる気がするっ…』
『──って、イザナミさんが役職名を決めちゃって、何故かそのまま浸透しちゃったんだよね…』
亡者に驚かれるのにも、慣れちゃった。と、Aは苦笑する。
「ほら皆さん、今度こそ昔話は終わりですよ」
まだ仕事中の方は速やかに戻って下さい。
手を叩いた鬼灯にそう言われて、集まっていた面々は慌てて自分の持ち場に戻って行く。
「鬼灯様、A様、沢山お話してくれてありがとー！！」
こちらに向かって叫ぶシロに手を振りながら、Aは呟いた。
『なんか、懐かしくなっちゃった。あの頃に写真とかの技術があればなぁ〜…』
そうしたら、子鬼の頃の可愛い鬼灯君の姿とか、皆に見てもらえたのに…
「男として、可愛いと言われるのは複雑なんですが…」
隣に居る複雑そうな表情の鬼灯を見上げて、彼女は微笑みかける。
『鬼灯君、私を選んでくれてありがとう』
「…こちらこそ、ずっと待っていて下さってありがとうございます」
貴女が居てくれたから、今の私はここに居るんですよ。
と、鬼灯はAを抱きしめる。
今日も明日も明後日も、夫婦2人一緒なら地獄でどんなハプニングが起ころうとも、乗り越えていける気がするのだった。
「まあ、出来れば何事も問題なく済んで欲しいですけどね」
『それはちょっと難しいんじゃないかなぁ〜』
だってここは"地獄"だもの。
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作者名：めぐりずむ | 作成日時：2021年10月1日 6時
