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sha「どしたんほっぺた。」
翌朝、腫れた頰に湿布を貼って出勤した私を視界に捉えたシャオちゃんが、目を細めて真剣な表情を浮かべた。
「ちょっと色々あったの。」
sha「色々って?」
「…けんか、したの。」
いまいち煮え切らない私の返答に、途端に彼は怒ったような表情になった。
sha「…喧嘩って、先輩と?」
彼氏は2つ上の先輩だった。
なんなら彼氏の浮気相手も2つ上の先輩だったんだから、不毛すぎてほんとに笑える。
「…うん。けどもう大丈夫。終わったの、うん。」
最後のは自己暗示。
こうでもしないと職場でも顔をあわせる彼らの事を考えてしまう。
それ以上何も聞かないし何も言わなくなったシャオちゃんに、呆れられたかな、まあそうかと自己完結してデスクについた。
シャオちゃん前から心配してくれてたもんね。
黒い噂が絶えなかった彼氏の事を訝しんで私に忠告してくれてんだもん。
馬鹿だよね、ほんと。
___
結論から言うと、彼氏とのアレやソレは終わってなどいなかった。
それに気付いたのは昼休憩、同期と一緒にご飯を食べに食堂に降りた時だった。
がやがやと賑わいを見せる食堂の向こうにあの男の姿が見えて、一緒目が合う。
あっと思って視線を逸らしたけれど、彼の燃えるような目を見た瞬間に、私の認識は甘かった事を悟った。
私はまた勝手に自分で自己完結させてただけで、何も終わってなどいなかったのだ。
心臓がさっきから煩い。
彼が真っ直ぐに自分の元へとやって来るのが見える。
今すぐに逃げ出したかったけれど、足は自分の意思とは裏腹に一歩も動かなかった。
俯いた視界の端に見慣れたグレーのスーツの袖が映る
そういえば、ソファに適当に脱ぎ散らかしたジャケットを、文句を言いつつハンガーにかけてあげてたっけ。
不意に思い出した何気ない日常に、涙が出そうになった。
「A。」
苛立ちを滲ませた声に顔を上げると同時、乱暴に腕を掴まれる。
同期が制止をかけてくれてるも、聞こえていないのが止める気配がない。
「ちょっと来い。」
「…今、休憩ちゅう…。」
「そんなんどうでも良いだろ!」
「やだってば、」
「そんな顔で会社来て、周りから同情買うつもりかよ!」
恐い、彼が何を考えているか分からない。
注目を浴びている事など最早気にならず、2人になると何をされるか分からない恐怖に支配される。
必死で抵抗を続けていると、頭の上でチッと短い舌打ちが聞こえた。
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ちぃ汰。(プロフ) - 初めてのコメント失礼いたします。本当に素敵な作品ばかりで常々楽しみにさせていただいております。今回のお話もとても素敵でした。陰ながら応援しております。 (2020年7月17日 20時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - お久しぶりの更新お疲れ様です!久々に来てみたら最推しが更新されてたし、かっこいいしでちょっと爆発してきました。これからも頑張って下さい!応援してます! (2020年7月17日 19時) (レス) id: 0c05c25a4f (このIDを非表示/違反報告)
「かぎかっこ」(プロフ) - おっど#sakuraさん» コメント並びにお心遣いまでありがとうございます!色んな形のお話をかけたらと思っておりますので、これからもお楽しみ頂けるように精進します! (2020年5月21日 16時) (レス) id: af5934532f (このIDを非表示/違反報告)
おっど#sakura - 心が暖かくなるのもあれば、ドロッドロに溶かされる様な甘いのもあってすっごい有意義な時間を過ごせました。上から目線のようになってしまいましたが、要するに最高な作品を読まさせて頂きありがとうございます。これからも応援してます。 (2020年5月17日 1時) (レス) id: 2fb229e0ec (このIDを非表示/違反報告)
「かぎかっこ」(プロフ) - 霞花さん» コメントありがとうございます。楽しんで頂けたようで幸いです! (2020年5月15日 21時) (レス) id: af5934532f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:「かぎかっこ」 | 作成日時:2019年9月27日 2時