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「グルッペン?」
gr「……ん?」
「どしたの?ぼうっとしてる。」
いつのまにかAが此方を見ていた。
彼女の膝に置かれた文庫本。
表紙に記された作者の名前は、Aに逢うまで俺の人生になかったものである。
今は彼女の好きな作家として、俺の中に刻み込まれている。
「書類終わり?」
gr「飽きた。」
「もう、すぐそれ言うね。」
どれどれと寄ってきたAが、隣から画面を覗き込む。
以前は距離を詰める度に照れていた筈だが、いつから彼女は慣れてしまったのだろう。
「あれ?スリープだよ。」
gr「ああ、大分触ってなかったからな。」
言いつつ無防備なその頰を両手で包む。
先程まで陽に晒されていたからか、温くて柔い。
そのまま上を向かせると、戸惑ったような、それでいて何か期待するような曖昧な瞳とかち合った。
Aも俺を攻略したいと思ってくれているのだろうか。
無垢なその表情の下で、1番になりたいだとか、独占したいだとか、考えてくれているのだろうか。
gr「A、キスしていいか?」
「……なんで、急に?」
gr「なんとなく。」
わざとキスをする前にAにお伺いを立てるのは、それをすると必ず彼女が少し泣きそうになるからである。
瞳を潤ませてもごもごと口籠る様子が、俺は結構好きだったりする。
gr「やめるか?」
「えっ、」
gr「したくないみたいやし。」
更に追い詰めると、逸らされていた視線が不安げに見上げてくる。
小動物のようなそれは、大変心臓に悪い。
「…今日、機嫌悪い?」
眉を下げて呟く彼女の頰をゆっくり撫でる。
どうしてそこで機嫌が悪いと思うのか。
やはり、彼女はまだまだ俺の事を分かっていないようだ。
「…い、いよ。私も……キスしたい。」
gr「そうか。」
「……。」
gr「A、こっち見ろ。」
俺の胸の辺りを彷徨っていた視線を上げさせ、俺を映した瞳を捕まえて、逃がさないように唇を合わせた。
だんだん体の力が抜けている事を察して少しだけ引き寄せると、彼女の腕が俺の膝の上に置かれる。
唇を離して掠めそうな距離で顔を覗くと、変わらず瞳は潤んだままだ。
gr「もう一回、いいか?」
「い、良いよ、そんないちいちッ、」
先程より深く口付けると、細い指がぎゅっと太ももに食い込んでくる。
弱々しいその感触は、俺の欲をぞくりと泡立たせた。
いつまで、かかるだろう。
あとどの位費やせば、Aを攻略出来るだろうか。
嗚呼、楽しみだ。
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ちぃ汰。(プロフ) - 初めてのコメント失礼いたします。本当に素敵な作品ばかりで常々楽しみにさせていただいております。今回のお話もとても素敵でした。陰ながら応援しております。 (2020年7月17日 20時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - お久しぶりの更新お疲れ様です!久々に来てみたら最推しが更新されてたし、かっこいいしでちょっと爆発してきました。これからも頑張って下さい!応援してます! (2020年7月17日 19時) (レス) id: 0c05c25a4f (このIDを非表示/違反報告)
「かぎかっこ」(プロフ) - おっど#sakuraさん» コメント並びにお心遣いまでありがとうございます!色んな形のお話をかけたらと思っておりますので、これからもお楽しみ頂けるように精進します! (2020年5月21日 16時) (レス) id: af5934532f (このIDを非表示/違反報告)
おっど#sakura - 心が暖かくなるのもあれば、ドロッドロに溶かされる様な甘いのもあってすっごい有意義な時間を過ごせました。上から目線のようになってしまいましたが、要するに最高な作品を読まさせて頂きありがとうございます。これからも応援してます。 (2020年5月17日 1時) (レス) id: 2fb229e0ec (このIDを非表示/違反報告)
「かぎかっこ」(プロフ) - 霞花さん» コメントありがとうございます。楽しんで頂けたようで幸いです! (2020年5月15日 21時) (レス) id: af5934532f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:「かぎかっこ」 | 作成日時:2019年9月27日 2時