追 ページ6
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潮風が髪をさらう
ばたばたと音を立てて揺れるコートと、帽子
「遅くなって、ごめんね」
2つの墓に、手を合わせる
左手に巻かれた包帯がキツくて、ちょっと痛む
あの後、なんとか一命を取り留めた私
目を開ければマルコだけじゃなくて、イゾウやハルタ、ナミュールも居て
怒られるんだって思ったら、みんな、泣いて
"生きててよかった"って
"もう誰も失いたくない"って
大の男たちが私を抱きしめて泣くから、私もつられて泣いちゃって
ごめん、ごめんねって馬鹿の一つ覚えみたいに泣きじゃくって
それから、しっかりとオヤジの、エースの死と向き合うって決めた
「エースに、笑われちゃうな」
顔を伏せたまま、目を開く
視界が歪む、胸が痛む
「あい、たいよぉっ、エースっ!」
漏れ出た言葉は、強く吹いた風にかき消される
「___どんだけ泣いてんだよ、泣き虫」
チリン、鈴の音がする
聞きなれた、けれどもう二度と聞けないと思っていた声に顔を上げる
そこにはただ、揺れ動く帽子だけ
ふわり、花の香りがする
「…ふふ、うっさいなぁ」
そうだね、泣いて縋ったってエースは帰ってこない
「また、来るね」
再度手を合わせ、2つの墓に背を向ける
チリリン
また、鈴の音がする
なんだか呼ばれているような気がして、後ろを振り向く
「えー、す」
揺れ動く黒髪、焼けた肌、白い歯がその唇から除き見える
「_____」
ぱくぱくと動く口に、涙が出る
「うん、うん私も、私もずっと」
「「あいしてる」」
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作者名:ごま明太子 | 作成日時:2021年1月11日 20時