人間なのに、首を切られた

８.夜の蝶 ページ8

*



目が覚めて見えたのは窓から降り注ぐ柔らかな光。




あぁ、夜だ。





布団から出て、戸をゆっくり開ける。


廊下は暗く、人の気配はなかった。




自然と息が深くなる。





一階に静かに降りて行くと、外へ出られる廊下があった。



月がぼんやりと輝いている。







「綺麗な月ですね。」





声のした方を見ると、女の人が立っていた。



いつから居たのか、気が付かなかった。




不思議な、淡く深い紫の目、蝶のような衣。





「ふふ、そんなに見られると少し照れます。


あなたは、こんな夜中にどうしてここに？


昼間は目覚めていなかったですよね。」





この人はだれだろう。



私の姿を見ても、何もしてこない。



来てる服は昼間の人と違っているし、





「あ、自己紹介がまだでしたね。すみません。


私は胡蝶しのぶです。怪我人の診察をしたりしてます。


あなたの怪我も診ていたんですよ。」





A「ケガ…あ、りがとう、ございます。」





しのぶ「いえいえ。


あなたを巻き込んでしまったのは、煉獄さんの不手際ですし。


あなたが起きたと知ったら、きっと明日にでも謝罪に来ますよ。」





A「しゃざい、に来る…」






しのぶ「人を切るなんて本来決して、あってはいけませんから。」








人を、切ることはあってはいけない。










なら『私』は…






分からない。






*

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