２９.自信 ページ30
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『え、良いですよ、そんな……』
「Aちゃんが歌うの、聞きたい。」
『え……私、下手なので。』
「そんなことないって、ほら。
あ、さっきの曲もう覚えたでしょ？？
Aちゃん記憶力いいから。」
『お、ぼえましたけど……』
「じゃあ一緒に歌お！！」
『えっ、そんなこと！！』
恐れ多い……
「よし！」
そう考えてる間にも、先輩は曲をいれていて、
もうイントロが流れていた。
「難しいところ俺が歌うから！
Aちゃん、歌えるところ歌って？」
そんな笑顔で言われたら、断れないよ……
『わ、かりました。』
そう言い、先輩はAメロを歌い出した。
どうしよう……小さい頃から歌が苦手で、ずっと歌ってきてなくて……
全く自信がない。
けど、手越先輩なら、
受け止めてくれるかな？？
あっという間にサビ前まで来て、先輩は私の方を不思議そうに見ていた。
ふぅ……。
よし！！
『おんなじ気持ち 咲き始めた あの日のように』
歌った瞬間、手越先輩が笑顔になって、ハモりをいれてくれた。
『「あぁ 出会った日の二人が 笑ってる」』
なんだろう。
手越先輩と歌うと、気持ちいい！
久しぶりに、歌が楽しいって思えた。
「『二人が 笑ってる』」
あっという間に一曲が終わった。
『ふぅ……』
「すごいよAちゃん！！！
めっちゃ声綺麗だし音程外さないし。
プロかと思った！！」
『そんな…先輩に言われたくないです！笑
すぐハモれるって、天才なんですか！！』
「まぁ天才かな〜」
『自分で言うんですね。笑』
「嬉しいな〜、俺。
Aちゃんのレアな歌声聞けて。」
『えっ、私もですよ！』
「歌ってくれて、嬉しかった、ありがとう！！」
『そんな……先輩のおかげです。』
そう、私が変われたのは全部手越先輩のおかげ。
先輩に言われてから長かった前髪も切って、
髪色も少し明るくして、
服も明るい色になって。
何より、自分に自信を持てるようになった。
言いたいことは、言えるようになった。
ｰｰ人生が、楽しくなった。
これはきっと手越先輩に出会わなかったら
変わらなかったんだろうなぁ。
ほんと偉大。
手越先輩は。
でも、こんなに楽しいのは今日で終わり。
『先輩、受験頑張ってくださいね！！』
そう、先輩はこれから本格的に受験。
今までみたいに遊ぶのは、先輩のために、控えようって決めた。
「ありがとう。頑張る！」
ずっと笑顔でいてほしいから。
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