２話 ページ2
「いらっしゃいませ」
Aはよそ行きの声を出した。逆光になってよく見えないが、顔があると思った位置が肩口だったので、Aは視線を上にずらす。目にかかるほどの長さの前髪がさらりと揺れた。
「遅かったな、ヒソカ」
「どうせ、ボクが時間なんか守らないって想定した上でのことだろうに♠」
「そうだな。当日中に来たことに感謝しないといけない」
ヒソカ、と呼ばれた男性は、長い足でツカツカとレジの前までやって来た。
急に距離が近くなり、Aはカウンターの中で縮こまった。ヒソカの身長が高くて怖いのだ。大きいとそれだけ威圧感がある。
クロロが山積した本を次々にヒソカに手渡していく最中、こっそりとヒソカを観察した。
赤茶けたサラサラの髪。男性にしては少し長めだ。前髪がわずかにかかった切れ長の瞳は金色で、猛禽類のような鋭い光がある。
彫りの深い顔立ちは非常に端正であり、つり上がった細い眉が人を突っぱねるような危うい魅力を感じさせる。Ｅラインのシルエットがあまりに完璧なので、Aは無意識のうちに、ヒソカを芸術品であるかのように捉えていた。
体つきも面持ち同様隙がない。ラフな服装をしているのに、着こなしが見事なのでブランドもので身を固めているよりも美しく見える。
無駄な肉がそぎ落とされた均整の取れた肉体は、絶え間ない研鑽の賜物だろうか。
Aはこっそり息を呑む。クロロが初めて来店したときも同じことを考えたのだが、こんなに綺麗な人がこの世にいるのね、と感心してしまった。
「ボクの顔に何かついてるかい？」
と、ヒソカが不意にAを見た。Aは座っているので、首を目一杯そらしてヒソカを見上げねばならなかった。
まじまじ観察されていたのに気がついたのだろう。Aは慌てて視線をそらし、こちらを見下ろす双眸から逃れるように俯いた。
「ごめんなさい。お客様に失礼を……その、あんまり綺麗な人でしたから、つい」
すみません、と消え入るような声。ヒソカはクッと喉を詰める笑い方をして、「初めて言われたよ♦」と面白そうに言った。
「いつもクロロがお世話になってます♣この人気分屋だから、無茶を言われたらすぐに断っていいからね♦」
「無茶ならもう何度も承っていますので……」
「やあ、手遅れだったか♠」
相手に気負わせるところのない軽妙な声色で気が軽くなり、Aはくすくす笑いながら顔を上げた。
「……A？」
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でぶき - 更新これから頑張って下さい!!🐼 (2022年6月11日 10時) (
レス) @page4 id: 804c35253a (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - くらげさんの新作、ずっと楽しみにしていました、！！ 長女たるものかくあるべし！の方は何度も何度も読み直させて頂いていて、文の書き方が本当に本当に好きです！お体に気をつけて更新頑張って下さい(´･･`)！ (2020年5月14日 15時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くらげ | 作成日時：2020年5月9日 23時
