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肌が、綺麗だと思った。
陽の光をものともせず、傷だらけになったとしても、いつまでも白磁のように輝いている肌が綺麗だった。

笑顔が眩しかった。
薄暗い山の中で姉の笑顔はきらきら輝いていて、自分には一生浮かべられないであろう表情をいつも湛えている姉が好ましかった。

冷酷さと危うさを知った。
他人に対してとことん無関心でありながら、家族のためなら悪魔にも人にもなってのけるAの、一歩違えれば壊れてしまいそうな危うさを慕った。

最初は確かに、弟が姉へと抱く愛情とカテゴライズしても問題はなかったのだろう。
暗殺。修行。天空闘技場。そしてハンター試験を経て、イルミが抱え込むそれは、とうとう取り返しのつかない執心へと進化を遂げた。

Aはイルミを隣に置いてすやすやと眠っている。
彼女の問いに「勿論だよ」と答えたところ、仲直りの証なのか、イルミを引きずり込んでそのまま寝てしまったのだ。

殺意や敵意に対しては即座に意識を覚醒させられるよう訓練しているが、逆に言えば、何もなければ起きないということである。
Aは特に眠ることが好きだ。一度眠ると、昔はキキョウがイルミをダシにしてやっと起きるくらいには、彼女の夢の世界は広い。

だから、イルミが目を閉じず、じっとAを観察していても、彼女の琥珀色の瞳と視線が交差することはないのだ。

睫毛が影を落としている。まだあどけなさを残すまろみを帯びた輪郭は、安らかに枕に預けられている。
寝室のぼんやりとした灯りの下でも、金髪は光をよくはね返す。海の色が金色だとしたら、きっとこんな風に波が輝くのだろう。

軽い着心地の寝巻きからすらりと伸びる四肢は、歳に似合わず案外筋肉質だ。
キキョウに女の子らしさの大切さを説かれている彼女は、最近体格を少し気にしている様子である。

女性性を何より強く意識させる胸は、未だなだらかだが、確実にたおやかにはなっている。
けれど、その下にある腹は薄く、これが子を宿せるようになるとは到底思えなかった。

このままでいい。──このままがいい。
変化も変容も要らない。Aがイルミの姉で、イルミはAの弟。永遠にこのままでいいと思うのに、なぜそれは認められないのだろうか。

この陰惨な森の奥で家族だけで過ごし、時折仕事で外に出て血の香りを纏って帰る。
ただそれだけを繰り返したいと思うのは、そんなにも禁忌的だろうか。イルミには分からなかった。

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ハナミズキ - キルアが出てこなかった。。。。。 (4月4日 21時) (レス) @page24 id: 9174215e87 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - あけましておめでとうございます! (1月10日 17時) (レス) @page24 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
伊波トウナ(プロフ) - 続きはもう無いのですね... (2023年4月19日 12時) (レス) @page24 id: ce08f5279c (このIDを非表示/違反報告)
レイカ(プロフ) - 続きは書かないのでしょうか? (2020年4月13日 2時) (レス) id: 2f295bf970 (このIDを非表示/違反報告)
無題 - そうだったんですか…。残念ですけど、今まで楽しく面白い作品をありがとうございました!!貴方の作品、大大大好きでした。くらげ様の新しい作品、とても楽しみにしています。本当にありがとうございました!! (2019年5月11日 6時) (レス) id: 9aad1e7bf8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くらげ | 作成日時:2018年10月13日 20時

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