21 ページ21
──イルミは知っている。
Aは、何か気分が落ち込むことがあると上手く眠れずに何時間か布団の中でぎゅっと丸まっていることを。
昔はぬいぐるみや、まだ小さかったイルミを抱いていたが、今は自身の片割れであるうさぎを抱きしめている。
特等席を取られたようで腹立たしく思ったのは、さて、いつの頃だったろうか。
「姉さん。起きてる？」
寝巻きのまま廊下を歩き、すぐ側にあるAの部屋をノックすると、訓練していなければ聞き取れないようなか細い返事があった。
それを了承と受け取って扉を開けると、やはりAは天蓋付きのベッドの中で、温かくもないだろううさぎを抱いて小さく丸まっていた。
「どうしたの、イルくん」
Aの問いかける声色には、明らかに怯えが含まれていた。先ほどのイルミの鋭い追及が後を引いているに違いない。
天真爛漫で、いつでも笑顔を絶やさない姉が、しょんぼりと眉を下げて落ち込んでいる。
少しだけ、イルミは自分の激しい非難を後悔し、そしてそれ以上に仄暗い愉悦を覚えた。覚えてしまった。
「さっき、言いすぎたから。……謝りたくて」
それをおくびにも出さず、イルミはさも反省してしおらしい可愛い弟そのものの態度で、小さく呟いた。
Aはそれをしかと聞き取り、薄暗い部屋で顔をぱっと輝かせる。
それからベッドに起き上がり、縁に腰掛けて隣をぽんぽんと叩いた。彼女は父に似て、至近距離での会話を好む。
無論イルミがそれを拒否する道理はなく、足音もなく姉が待つ褥に近づき、そっと柔らかなマットに腰を下ろした。
「あのね、わたしも謝りたかったの。イルくん、きっと不安だったよね。ごめんね。わたしも、わたしがどうしてあんなことしたのかよく分からなくて、おかしなこと言っちゃったの」
イルミが話を切り出すよりも先に、Aが堪え切れないような様子で話し出した。
ごめんね、と切なげに繰り返しながら、うさぎをベッドに放してイルミを抱きしめる。
その仕草は、弟を愛してやまない、慈愛に満ちた姉を体現したかのようなものであった。
「イルくんがあんなに怖い顔したのも、わたしを心配してたからだよね」
「……うん」
「やっぱり！だと思ったの。落ち着いて考えたから、今なら分かるよ。本当にごめんね。イルくんを怖がらせちゃったね。もう二度とあんなことしないって誓うから、……許して、くれる？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 857人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ハナミズキ - キルアが出てこなかった。。。。。 (4月4日 21時) (
レス) @page24 id: 9174215e87 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - あけましておめでとうございます！ (1月10日 17時) (レス) @page24 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
伊波トウナ(プロフ) - 続きはもう無いのですね... (2023年4月19日 12時) (レス) @page24 id: ce08f5279c (このIDを非表示/違反報告)
レイカ(プロフ) - 続きは書かないのでしょうか？ (2020年4月13日 2時) (レス) id: 2f295bf970 (このIDを非表示/違反報告)
無題 - そうだったんですか…。残念ですけど、今まで楽しく面白い作品をありがとうございました！！貴方の作品、大大大好きでした。くらげ様の新しい作品、とても楽しみにしています。本当にありがとうございました！！ (2019年5月11日 6時) (レス) id: 9aad1e7bf8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くらげ | 作成日時：2018年10月13日 20時
