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「流星街の価値観とオレ達の価値観が、妙な部分で噛み合っているんだろうな。あいつは」
帰宅後、キキョウにすぐさま風呂に連れて行かれたAを見送り、イルミはシルバの部屋へと向かった。
息子がやって来ることを予見していたらしきシルバは大きなソファにイルミを座らせ、一般的な親子のように隣り合って話すことを望んだ。
「あいつはキキョウのお気に入りだ。何かを教わる機会も多い。キキョウが流星街で培った経験や死生観も、オレが教えたことも、全て否定することなく呑み込んだ結果だろう」
「流星街?」
「ゴミでできた都市だ。オレとキキョウはそこで出会った」
何故そんな場所を訪れていたのか、気になるところではあるが今は関係のない疑問なので胸にしまっておく。
「オレも詳しくは知らんが、流星街の絆は他人より細く家族よりも強いという。それに基づく話をキキョウから聞かされていたとしたらどうだ?」
「……姉さんは他人を知らないから、家族を何より大切にすると変換する?」
ゾルディック家に生まれて以来、Aもイルミも暗殺以外で門の外に出たことがない。
敷地内で生活の全てが事足りる上、まだ幼いからとキキョウが例のごとく過保護を披露しているからだ。
「そうなるな。加えてうちの教育だ。あいつが標的を見る目を見ただろう。どんな目をしていたか表現するなら、大抵の人間は同じことを言うに違いない」
イルミは思い出す。射干玉の夜、場違いなほどに煌々と光る月に照らされた琥珀色の瞳を。
標的が死ぬまで、表情筋をぴくりとも動かさず見つめていたあの目を。あれは、そう──
「ゴミを見る目、だった」
「そうだ。あいつにとって、家族以外はゴミ同然のものなんだろうな。暗殺者としてこの上ない認識だよ」
くつくつと喉を鳴らすシルバは、一見すると見込みのない娘が意外なところで才能を発揮したのが嬉しくて仕方がないのだろう。
打てば響き教えれば呑み込む。こと学習において、Aは努力を惜しまない。才能も努力も兼ね備えた子どもが二人もいるとなれば、それが当然だ。
しかし、これを聞いてイルミが隠し持つ恐れは、一層その強さを増した。
察していることを家族や執事に悟らせまいとしているから、イルミがそれを感じ取っていることは誰にも知られていないのだが、胸中ではずっと疑問を抱いている。
Aは、本当はゾルディックの血を継いでいないのではないかと、姉の金糸を見る度思うのだ。
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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時